2種類の糖が腸内細菌に作用しマウスの高脂肪食による肥満抑制、新規プレバイオティクス開発に期待

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2022/8/4

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「L-アラビノース」と「スクロース」の同時摂取が腸内細菌にもたらす効果は?

慶應義塾大学の研究グループは、腸内細菌によって利用される2種類の糖が特定の腸内細菌に協調的に作用することで、高脂肪食が原因の「肥満」を抑制することを発見したと発表しました。

食物繊維はヒトの酵素で消化・吸収できない難消化性の糖類です。体内へ取り込まれずに腸内細菌の栄養源となることから「腸内細菌利用糖」と呼ばれます。腸内細菌利用糖は、腸内環境を改善し、健康維持や疾患予防に寄与することが知られています。

天然甘味料や食品添加物として使用されている「L-アラビノース」は、トウモロコシ・米・小麦など、穀物の繊維質に含まれる単糖で、小腸から吸収されにくい性質を持っています。砂糖はスクロース(ショ糖)を主成分としており、過剰摂取で肥満のリスクを高めますが、L-アラビノースはスクロースの消化に関わるスクラーゼという酵素の活性を阻害することも知られています。

研究グループは、L-アラビノースとスクロースを同時に摂取することで両者が腸内細菌利用糖として機能し、腸内環境改善に相乗的な効果を発揮する可能性があると考えました。しかし、両者が腸内細菌にどのように作用するのかは不明でした。そこで今回、両者の協調作用を明らかにすることを目的に、研究を行いました。

個人に合った腸内環境を作り上げる「プレシジョン・プレバイオティクス」のヒントに

マウスを用いた実験の結果、脂肪を多く含む食品と、L-アラビノースとスクロースを一緒に摂取することで、スクロースの消化・吸収が抑えられるだけでなく、協調作用により腸内環境も改善され、高脂肪食による肥満を抑制できる可能性が示唆されました。

「今後も腸内細菌利用糖の特性を一つずつ明らかにしていくことにより、個人に合った腸内環境を作り上げる、プレシジョン・プレバイオティクスの実装化が期待される」と、研究グループは述べています。

今回は腸内細菌を改善させて偏った食事による肥満を抑制する糖の組み合わせが見つかったということでしたが、今後この研究がIBDをはじめとする疾患にも応用されていくことに期待したいですね。

(IBDプラス編集部)

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