慢性回腸嚢炎に対する「ベドリズマブ」治療、第4相試験結果を発表

ニュース2023/4/6

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活動性慢性回腸嚢炎に対しては、EUでのみ承認済み

武田薬品工業株式会社は、慢性回腸嚢炎の治療薬としてのベドリズマブの臨床第4相EARNEST試験の良好な結果が、「New England Journal of Medicine(NEJM)」に掲載されたと発表しました。

潰瘍性大腸炎の患者さんにとって治癒の可能性のある手術選択肢は、大腸全摘術と、それに続く排便機能を保持するための回腸嚢の作製(IPAA)です。回腸嚢の炎症である「回腸嚢炎」は、便失禁、腹部不快感、出血を生じさせる可能性があります。慢性回腸嚢炎(症状の持続期間が4週間超と定義)は、回腸嚢炎の患者さんの最大5分の1に発生する可能性があるとされています。

ベドリズマブは、血液中の白血球がもつ「α4β7インテグリン」というタンパク質を狙い撃ちにする生物学的製剤です。同剤は、消化管の血管とリンパ節に選択的に発現している「腸粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)」というタンパク質に、白血球がα4β7インテグリンを介してくっつくのを邪魔します。

現在、ベドリズマブは、欧州連合(EU)においてのみ、潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術および回腸嚢肛門吻合術(IPAA)を受け、抗菌剤治療で効果不十分または効果減弱がみられた中等症~重症の活動性慢性回腸嚢炎の成人患者さんに対する治療に適応されています。

日本では、標準療法または抗TNFα抗体による治療のいずれかに対し効果不十分、効果減弱、または不耐性である中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎とクローン病の成人患者さんに対する治療薬として承認されており、米国では、中等症~重症の活動性の潰瘍性大腸炎およびクローン病の成人患者さんの治療に適応されています。

内視鏡的寛解、14週時点でプラセボのグループは10%だったのに対し、ベドリズマブのグループは31%

今回公表された結果では、臨床第4相EARNEST試験が回腸嚢炎患者の臨床スコア「mPDAI」を用いた臨床的および内視鏡的寛解である有効性の主要評価項目を達成し、14週時点において、プラセボ(偽薬)のグループでは10%だったのに対し、ベドリズマブのグループでは31%だったことが示されたということです。

プラセボとの比較におけるこのような転帰の改善は、34週時点における有効性の副次評価項目でも認められたとしています(mPDAIによる寛解達成率はプラセボ投与群では18%、ベドリズマブ投与群では35%)。mPDAIによる寛解以外にも、ベドリズマブ投与群は14週時点および34週時点においてプラセボ投与群を上回る臨床的な改善を示しました。

重篤な有害事象は、ベドリズマブ群の6%、プラセボ群の8%で発生しましたが、安全性に関して新たなシグナルは見られなかったということです。

今回、ベドリズマブがプラセボに比べ、潰瘍性大腸炎患者さんのIPAA後の慢性回腸嚢炎「寛解誘導」に有効であることが示されました。今後に期待したいですね。

(IBDプラス編集部)

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