幼児期の「感情制御の困難さ」と、IBDなどの炎症に関わる腸内細菌叢が関連

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2023/9/21

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個人が生涯もつ腸内細菌叢の基盤は3~5歳頃までに決まる

京都大学と大阪大学の研究グループは、幼児期の「感情制御」が、腸内細菌叢と関係することを明らかにしたと発表しました。

自己の欲求などをコントロールする「感情制御」は、幼児期の前頭前野の発達に伴い、急激に発達します。また、この時期の感情制御が、将来の社会経済力を予測することもわかっています。しかし、この時期の感情制御には大きな個人差がみられ、その原因は不明なままです。

最近、「脳―腸―腸内細菌叢相関」という双方的な関連から中枢神経機能を捉える研究が注目を集めています。成人を対象とした研究では、腸内細菌叢は身体の健康のみならず、こころの健康(不安やうつ)にも関連することが示されていますが、乳幼児を対象とした研究はほとんど行われていません。

ここで重要なのは、「個人が生涯もつことになる腸内細菌叢の基盤が3~5歳頃までに決まる」という点です。これは、感情制御が急激に発達する時期と一致します。この時期に成人レベルに安定化する腸内細菌叢は、感情制御を含む「実行機能」の発達と関連する可能性があります。

腸内細菌叢の組成は、食習慣に大きく依存します。特に、腸内細菌叢が安定化するまでの乳幼児期には、その影響はきわめて大きいと考えられます。これらのことが明らかになれば、腸内細菌叢や食生活をベースとした認知発達支援法の開発も期待できます。

そこで研究グループは今回、3~4歳の日本人幼児257人を対象に、感情制御を含む、いくつかの種類の認知機能が、腸内細菌叢や食習慣とどのように関連するのか検討しました。

対象となった幼児の便の採取を行い、腸内細菌叢の評価を実施。また、実行機能や食習慣は子どものお母さんに依頼して、質問紙に解答してもらいました。そして、実行機能の発達にリスクを抱える幼児(困難群)と、リスクを抱えていない幼児(対象群)を比較し、腸内細菌叢や食習慣の面でどのような違いがみられるかを検証しました。

感情制御が困難な群の腸内は、IBDやサイトカインなど「炎症」と関連する菌叢が多い

その結果、困難群は対照群に比べ、腸内細菌の種類に「アクチノマイセス属」と「サテレラ属」が多いことが明らかになりました。これらは、身体の炎症性疾患(炎症性腸疾患など)や、血中の炎症指標(サイトカインなど)の高さとの関連が指摘される菌です。

成人を対象とした研究では、腸内の炎症が脳の炎症と関連すること、炎症に関連する菌の豊富さがうつや不安障害などの精神疾患と関連することなどが明らかにされています。今回の研究により、幼児期の感情制御の困難さに、腸内細菌叢の中でも、特に炎症との関連が指摘される菌叢が関わっている可能性が示されました。

感情制御が困難な群の特徴、「緑黄色野菜の摂取頻度が低い」「偏食の割合が高い」

さらに、食習慣との関連では、困難群は対照群と比べ「1週間あたりの緑黄色野菜の摂取頻度が低い」「偏食の割合が高い」ということも明らかになりました。食習慣は個人がもつ腸内細菌叢と密接に関連することが知られていますが、幼児期の食習慣がこの時期の感情制御の発達リスクと関連することが示されました。

一方、認知制御に関する発達リスクについては腸内細菌叢や食習慣との関連は見られなかったことから、腸内細菌叢や食習慣は実行機能の中でも、感情制御の機能と関連することが明らかになりました。

研究成果を子育ての現場で活用するための社会実装を目指す

今回の研究により、幼児期の感情制御の困難さが、腸内細菌叢の「炎症に関連する菌を多く持つ」という特性と関連すること、また、その背景にある食習慣が関連する可能性が示されました。

研究グループは「将来的には、個々の生体データを有効に活かした個別型の認知発達支援法の開発も期待できる。研究成果を子育ての現場で活用するための社会実装も積極的に進めていく」と、述べています。

(IBDプラス編集部)

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