北里大学北里研究所病院 IBD市民公開講座

ニュース2023/10/17

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北里大学北里研究所病院は10月7日、IBD市民公開講座を開催。IBDの治療、薬、両立支援、難病医療助成制度、食事など、誰もが知りたいことをテーマに、IBDプラスにもご協力いただいている、同病院 炎症性腸疾患先進治療センター・センター長の小林拓先生らが登壇されました。

患者さんの身体的負担が少ない「非侵襲的検査」が徐々に一般的なものに

まず初めに、炎症性腸疾患先進治療センター・副センター長の佐上晋太郎先生が、IBDセンターの紹介をされました。佐上先生は、IBD治療はこの20年間で劇的に進歩したと前置きした上で、「これからは一人ひとりが、より良いかたちで疾患と共存していくことが重要だ」と述べました。

また、最近では患者さんの身体的な負担の軽減を重視している病院が増え、何でもかんでも大腸内視鏡検査ではなく、腸管エコー、カプセル内視鏡、CT/MRエンテログラフィ、便中マーカーなどの「非侵襲的検査」を活用することが一般的になりつつあると述べました。

次に、薬剤部の南有里さんがIBD治療で使用される薬剤について講演されました。生物学的製剤における二次無効の問題については「抗体の出現だけでなく、薬剤量が不十分な可能性もあるので、投与量を含め医師と相談しながら治療に臨んで欲しい」と述べました。

また、2022年に潰瘍性大腸炎の治療薬として承認され発売されたインテグリン阻害薬「カログラ(一般名:カロテグラストメチル)」に関して、カログラでの報告は無いが、他のインテグリン拮抗薬「ナタリズマブ(遺伝子組換え)」で、進行性多巣性白質脳症(PML)の発現が報告されているため、6か月を超えて使用することはできない。再治療にも、少なくとも8週間の休薬期間が必要ということを理解して欲しいと説明しました。

また、薬剤師はIBDの治療薬だけではなく、IBD以外で併用している薬もあわせてサポートしているとし、使用中の薬剤について疑問や不安なことなどがあれば遠慮なく聞いて欲しいと語りました。

両立支援を求めることは基本的人権に基づいた行為、決してためらわないで

次に、ソーシャルワーカーの村崎美和さんが「学校・仕事と治療の両立」について講演されました。実際に患者さんから寄せられる「学校と治療の両立」に関する問題は、「病気への理解が十分ではない」「特性に応じた環境調整の必要性(トイレ・学校給食など)」「学習方法の体勢(入院への対応など)が整っていない」などが多いとのこと。ソーシャルワーカーたちは教育機関に働きかけを行い、「職員室のトイレの貸し出し」「先生や同級生たちに向けて病気について学んでもらう機会を設ける」「ICT活用による遠隔教育」などを実現しているそうです。

「仕事と治療の両立」に関する問題は、「病気への理解が不十分(一部退職を余儀なくされている)」「治療計画などに合わせた働き方ができない」などが多く、患者さんの職場に対して「事業所内での基本方針の整備・職員研修」「休暇・勤務制度の整備」「相談窓口明確化」などの改善を呼びかけているとのことでした。

学校・仕事との両立について悩んでいるという人はまず医師・看護師・ソーシャルワーカーに相談するのが基本ですが、難しい場合は下記に相談することも可能だということです。

  • 難病相談支援センター
  • ハローワーク
  • 産業保健総合支援センター
  • 地域障害者職業センター
  • 患者会

村崎さんは「サポートを受けることをためらう人もいるようだが、基本的人権にある権利保障に基づいているものなので遠慮しないで欲しい。私たちソーシャルワーカーも支援を通じて社会問題を発見し、当事者たちと一緒に誰もが生きやすい社会に変えていきたいと思っている」と述べました。

次に、事務部医事課の麻生麻衣さんが、難病医療助成制度について講演されました。令和3年度末現在の受給者証所持者は102万1,600人で、338疾患中、潰瘍性大腸炎は約14万人で2番目に多く、クローン病は約4万8,000人で4番目に多いそうです。

受給者証を申請するには、まず「指定難病医」を受診し、受給対象になるかの確認を行い、臨床調査個人票を作成し、医療費助成の申請書類を提出します。しかし、提出して終わりではなく、臨床調査個人票をもとに「指定難病審査会」が診断基準に照らして指定難病であること、病状の程度が一定程度であることを重症度分類などに照らして確認します。その結果、認定となれば受給者証が交付され、認定されなかった場合は不認定の通知が届きます。申請から結果通知までには約90日かかるので、早めに提出した方が良いとのことでした。

受給者証があると医療費が2割負担になる(通常3割負担)、月の自己負担上限額以上の医療費はかからないなどメリットも大きいので、今回初めて知ったという人は、一度主治医の先生や病院の窓口で確認してみてはいかがでしょうか。

寛解期は神経質になる必要はないが、高脂質の調理法や甘味料には要注意!

次に、診療技術部栄養課の白井智美さんが「食生活」について講演されました。白井さんによると、糖質は小腸でほとんど消化されますが、脂質や食物繊維は大腸に行くまでほとんど消化されず、食物繊維は腸内細菌が分解・吸収するそうです。そのため、IBD患者さんに処方される栄養剤も、タンパク質、ペプチド、アミノ酸のどこまで分解されているのかによって分類されているとのこと。成分栄養剤はアミノ酸まで分解されているため、消化が不要だそうです。

さらに白井さんは、脂質と食物繊維は消化器に負担をかけるので、活動期の脂質は1日30g程度に抑えて欲しい。また、玄米、とうもろこし、ごぼう、果物や野菜の皮、果物の種など残渣にも気を付けて欲しい。特に、タコ、イカ、貝類などの「筋繊維」は見落としがちなので注意が必要だと述べました。

一方、寛解期は特に制限は必要なく、クローン病も薬で病勢がコントロールできている場合は特別神経質になる必要はないと述べました。ただし、刺激物、脂質の多い食材や調理法(揚げ物・アヒージョなど)、甘味料(ソルビトール、キシリトールなど)には十分注意して欲しいと語りました。

最後に小林先生は、IBDが完治する日は来るのかという問いに対し、「そのような日が来ることを願っている。しかし、例え完治しなくても、他の人と変わらない生活が送れる時代がすぐそこまで来ている。メンバー一同、そんな明るい未来のためにこれからも頑張っていきたい」と述べ、講演を締めくくりました。

(IBDプラス編集部)

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