マイクロRNAの全身投与でIBDモデルマウスの治療に成功

ニュース2018/8/17

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miR-29aとmiR-29bを「スーパーアパタイト」に搭載・全身投与

大阪大学大学院医学系研究科の山本浩文教授(消化器外科学/保健学科分子病理学)と水島恒和寄附講座教授(炎症性腸疾患治療学)らの研究グループは、炎症性サイトカインを抑えることが知られているマイクロRNA(miR)-29aおよびmiR-29bを、全身性の核酸デリバリーシステムである「スーパーアパタイト」に搭載し、炎症性腸疾患(IBD)モデルマウスに全身投与したところ、腸炎の発症予防と治療効果について顕著な有効性が認められたと発表しました。

マイクロRNAなどの核酸医薬が全身投与でその効果を発揮するためには、血中での不安定性や、標的細胞への取り込み効率の問題など、実用化には多くの障壁があるとされていました。今回の研究に用いられたスーパーアパタイトは、カルシウム・炭酸・リン酸からなる炭酸アパタイト粒子を生体利用できるように改良した全身性核酸デリバリーシステム。これまでの研究では、固形がんに対する核酸デリバリーで高い効果を示していました。

効率よく炎症腸管の樹状細胞に送達、炎症性サイトカインの産生を抑制

研究グループは、スーパーアパタイト法を用いてmiR-29aまたはmiR-29bをIBDモデルマウスに全身投与。マイクロRNAが炎症腸管にあまり集積しないにも関わらず、炎症性サイトカインが減少し、腸炎の予防と予想以上の治療効果が示されました。さらに、マウスの腸管を調べたところ、スーパーアパタイトに搭載したマイクロRNAが効率よく炎症腸管の樹状細胞(免疫応答の司令塔細胞)に送達され、炎症性サイトカインの産生を抑制していることが明らかとなりました。

今回の結果から、スーパーアパタイト法が炎症部位の樹状細胞へと核酸医薬を輸送する特異なドラッグデリバリーシステム(DDS)として機能し、炎症反応を分子レベルで抑えることで腸炎の予防・治療効果を示すことがわかりました。これまでに核酸医薬を特異的に炎症部位に集積させる技術は開発されておらず、静脈注射・皮下注射などの全身投与でこれを可能にするスーパーアパタイト法はこれまでにない画期的な核酸デリバリー法であると考えられます。

この結果が、クローン病や潰瘍性大腸炎などIBDの新しい治療薬創出に繋がる可能性は高く、炎症反応が関与するさまざまな疾病に対する治療薬の創出に繋がることが期待されます。

(IBDプラス編集部)

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