AIを活用したカプセル内視鏡画像診断支援システムを開発
ニュース | 2018/11/13
体への負担と病変の見逃しが指摘されているカプセル内視鏡
東京大学医学部附属病院消化器内科の青木智則医師(大学院生)、山田篤生助教、小池和彦教授らのグループと、株式会社AIメディカルサービスは、共同で人工知能(AI)を活用し、小腸カプセル内視鏡画像の中から粘膜傷害(びらん・潰瘍)を高精度で自動検出する内視鏡画像診断支援システムを開発したことを発表しました。
近年、カプセル内視鏡を用いて小腸の粘膜障害を見ることができるようになりましたが、1患者あたり6万枚程度の内視鏡画像を30~120分かけて読影するのは、読影者にとって大きな負担です。また、大きな異常所見でもたった1枚の画像にしか写っていないこともあり、病変の見逃しも危惧されています。また、カプセル内視鏡における小腸異常所見の中で最も頻度が多いのは、薬や炎症による粘膜傷害(びらん・潰瘍)ですが、周囲粘膜との色の変化に乏しい場合も多く、自動検出法は確立されていません。
10,440枚を233秒で解析、びらん・潰瘍を91%の精度で正診
研究グループは、最先端のAI技術であるニューラルネットワークを用いたディープラーニングを活用し、小腸のびらん・潰瘍が写った5,360枚の内視鏡画像をAIに学習させ、病変検出力の検証を行いました。その結果、検証用の内視鏡画像10,440枚(びらん・潰瘍440枚、正常小腸10,000枚)から、びらん・潰瘍を91%の精度で正診することに成功。10,440枚の画像の解析に要した時間は233秒で、解析速度は人間の能力をはるかに超えるものでした。さらに、同システムでは熟練した内視鏡医が発見できなかった病変も見つけることができ、病変見逃しの防止につながる可能性も示されました。
カプセル内視鏡診断支援システムのAIは、さらに学習することで診断精度を向上させることが可能です。カプセル内視鏡は消化管内で自動的に多くの写真を撮るため、観察に不適切な泡や食物のカスが画像内に含まれることが珍しくありません。AIはそれらを病変であると間違って認識したり(偽陽性)、それらの影響で病変を検出できなかったり(偽陰性)することもあり、それらが病変ではないとAIに学習させることによる改善が期待されます。また、カプセル内視鏡画像にはびらん・潰瘍のみならず、がんや血管異常といった病気も写ります。これまで、AIを活用したカプセル内視鏡診断支援システムは確立されていません。
研究グループは、「今後さらに、検出精度の向上や粘膜傷害以外の病変の検出といった応用を進め、小腸病変検出を支援するカプセル内視鏡診断支援システムの実用化を目指します」と述べています。
(IBDプラス編集部)
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