大腸の新たな腸管運動メカニズムを発見、潰瘍性大腸炎の新薬開発につながる可能性
ニュース | 2019/6/12
TRPA1受容体を発現した間葉系細胞が、大腸腸管運動を制御
兵庫医科大学大学院医科学専攻(神経解剖学)博士課程の楊 燕京さんらの研究グループは、兵庫医療大学との共同研究により、大腸粘膜固有層に存在するTransient Receptor Potential(TRP)A1受容体を発現した間葉系細胞(上皮以外の間葉と呼ばれる部分を構成する細胞)が、大腸腸管運動を制御するという新しい生理学的メカニズムを発見。さらに、潰瘍性大腸炎に伴う腸管運動の異常に、腸管内の間葉系細胞が重要な役割を担うことを証明しました。
腸管運動のメカニズムとして、以前から自律神経による運動調節が知られています。近年では、小腸腸管運動の調節に、非神経性の粘膜上皮EC細胞は腸管内の環境変化を感受し、TRPA1を介して運動を調節することが明らかになってきています。その一方で、大腸粘膜上皮のEC細胞分布は小腸より少なく、大腸腸管運動への関与は不明でした。
間葉系細胞「TRPA1」をターゲットとした新たな治療薬の開発に期待
研究グループは今回、大腸内に腸管運動を記録するための圧センサーを留置し、生体における腸管運動を記録。その結果、TRPA1受容体に結合して作用する、AITCという薬の投与により、腸管運動が誘発されることが判明しました。
さらに詳しく調べたところ、腸管の粘膜下に存在する間葉系細胞が、特異的にTRPA1を発現することを突き止めました。また、炎症で誘導されるCOX2というタンパク質は、炎症を促進するプロスタグランジンE2(PGE2)の合成を介しますが、間葉系細胞はCOX2を発現し、PGE2を放出して、腸管運動の調節を行っていることも発見しました。
また、潰瘍性大腸炎モデル動物を用いて研究を行ったところ、大腸の間葉系細胞が増殖し、TRPA1の発現が増加しました。これにより、モデル動物での話ではありますが、大腸腸管運動の異常性に間葉系細胞のTRPA1を介したメカニズムが重要であることを明らかにしました。
腸管運動のメカニズムとして、間葉系細胞TRPA1が関与するということは新たな発見であり、これらのタンパク質もしくは細胞をターゲットとした新たな治療薬の開発が期待されます。
(IBDプラス編集部)
IBDプラスからのお知らせ
治療の選択肢が広がる「治験」に参加してみませんか?IBD治験情報サービスへの無料登録はこちら会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?
IBDプラス会員になるとこんな特典があります!
- 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
- 2. 会員限定記事が読める
- 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる