乳製品の摂取後、乳酸菌が機能性を保ったまま回腸末端まで届いていると判明
ニュース | 2020/7/7
乳製品に含まれるプロバイオティクス、本当に「生きたまま腸に届く」の?
株式会社ヤクルト本社と弘前大学の共同研究グループは、乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株(以下、L.カゼイ・シロタ株)を含む乳製品の単独摂取、ビフィズス菌ビフィドバクテリウム ブレーベ ヤクルト株(以下、B.ブレーベ・ヤクルト株)を含む乳製品の単独摂取と同時摂取が、回腸(小腸の後部)末端部の細菌叢構成に及ぼす影響を、弘前大学が開発した「内視鏡的逆行性腸管挿入法(ERBI)」という手法を使って調べた結果を発表しました。
乳酸菌などのプロバイオティクスには、整腸作用、免疫調節作用、ストレス緩和作用などがあると考えられています。しかし、プロバイオティクスの小腸内での動態に関しては、これまで十分に検証されていませんでした。
研究グループはそれらを明らかにするため、回腸末端部の内容物を採取できるERBIを用いて研究を実施。L.カゼイ・シロタ株およびB.ブレーベ・ヤクルト株を含む乳製品を摂取した直後から回腸内容物を含む液(回腸液)を経時的に採取し、回腸末端部の細菌叢構成およびL.カゼイ・シロタ株とB.ブレーベ・ヤクルト株の動態について調査しました。
まず、7人の健常な男性(平均年齢37.6歳)を対象に、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品、B.ブレーベ・ヤクルト株を含む乳製品を、それぞれ単独または同時に摂取してもらい(一部の人は試験を複数回掛け持ち)、摂取後30分ごとに最大7時間まで、ERBIを用いて回腸液を回収しました。
その結果、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の単独摂取では、摂取後1.0~5.5時間の間、L.カゼイ・シロタ株が細菌叢の90%以上を占有するケースが確認されました。B.ブレーベ・ヤクルト株を含む乳製品の単独摂取においては、摂取後4.0~4.5時間の間、B.ブレーベ・ヤクルト株が細菌叢の90%以上を占有するケースが確認されました。また、L.カゼイ・シロタ株およびB.ブレーベ・ヤクルト株を含む乳製品の同時摂取においては、摂取後4.5~5.0時間の間、両菌株で細菌叢の90%以上を占有するケースが確認されました。
さらに、回腸末端部まで到達したL.カゼイ・シロタ株とB.ブレーベ・ヤクルト株が、代謝活性と増殖性を保持したまま、回腸末端部まで到達したこともわかったそうです。
胃液の中を通過するなど過酷な状況にさらされながらも、機能性を保ったまま回腸末端まで到達
今回の研究成果により、L.カゼイ・シロタ株とB.ブレーベ・ヤクルト株が、強酸性の胃液や、中性~アルカリ性の胆汁や膵液の劇的なpHの変化にさらされながらも、その後、回腸末端部の多様な常在細菌が存在する環境下で、細菌叢構成を数時間も占有したということが明らかになりました。この結果は、プロバイオティクスのもつ機能を解明する糸口になると考えられます。
研究グループは、「今後もプロバイオティクスの消化管や全身に及ぼす作用とメカニズムについて研究していく」と、述べています。
「身近にあるおなかによいもの」として誰もが知るプロバイオティクス。シロタ株、ヤクルト株という名前もよく耳にしますが、まだまだ知られていない「はたらき」がありそうですね。今後も引き続き、注目していきたいと思います!
(IBDプラス編集部)
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