その症状、放っておいて大丈夫? 1から学ぶ「IBDの合併症」-基礎知識・痔のお悩み編-

ご自身の病気についてきちんと勉強している人でも、「IBDの合併症」については意外と知らないことが多いはず。IBDの専門医でも判断に迷うことがあるという合併症について、東京慈恵会医科大学 内科学講座/消化器・肝臓内科 主任教授の猿田雅之先生に、みなさんからの質問にお答えいただきました。今回は「基礎知識・痔のお悩み編」として、合併症の基本的な概念や予防法、IBDで多い痔に関する質問をご紹介します。

適切なIBD治療以外の「合併症予防法」は?

――合併症と併存疾患の違いを教えてください

合併症とは「ある病気が原因となって起こる別の病気」のことであり、その病気が発生しなければ起こりません。つまり、炎症性腸疾患(IBD)が存在することで起こる病気を「合併症」と言います。これに対し、もともとある別の疾患や、IBDとは関係なく起こる病気のことを「併存疾患」と言います。

――薬の副作用は「腸管外合併症」に該当しますか

一般的に、腸管外合併症として挙げられるのは、関節症状、皮膚症状、眼の症状、胆管・膵臓などの消化器症状、血栓症などです。例えば、クローン病は口からおしりまで病気が起こりますので、口内炎は自然発生的に出てきます。関節炎も、IBDが悪化することで発症したり悪化したりします。このように、IBDであることで自然に起こってくる疾患を「腸管外合併症」と言います。これに対し、薬の副作用は二次的な反応なので、腸管外合併症には含まれず、「薬剤に伴う合併症」という別のくくりになることが多いです。ただし、抗TNFα抗体製剤の使用による「乾癬様皮疹」など、一部、腸管外合併症として扱われるものもあります。

――IBDの病状が良くなれば、合併症の症状も収まるのでしょうか

一概にそうとは言えません。例えば、関節の病態では、IBDの病態と連動するタイプと、全く関係しないタイプがあります。ただ、多くの合併症は疾患の活動とともに悪くなったり良くなったりするので、IBDの治療が上手く行けば症状も消えていきます。

また、腰椎や仙腸関節に起こる「体軸性脊椎関節炎」という特殊な合併症は、IBDの病態と全く関係なく進行することがあり、レントゲンで見たら背骨が既にくっついてしまっていた、などということもあります。このような場合は、整形外科やリウマチ科に相談します。一方で、この合併症は抗TNFα抗体製剤がとてもよく効くので、IBDに対してこの薬剤を使用したら両方とも良くなったという患者さんもおられます。

――適切なIBD治療を受ける以外に、合併症の予防法はありますか

合併症予防の一つとして「受けられるワクチンは受けておく」というのが挙げられます。

体に潜んでいる水疱瘡(水ぼうそう)ウイルスが、免疫力が低下した時などに再活性化して神経を阻害するのが「帯状疱疹」ですが、JAK阻害薬を服用している患者さんに多く発症することがわかっています。一方で、数年前に「帯状疱疹ワクチン」が登場し、その効果が期待されています。また、免疫力を抑える薬を使っている時などに初めて水疱瘡にかかってしまう方もおられますが、事前に水疱瘡未感染とわかっていれば、水疱瘡に対しても「水痘ワクチン」を適切に投与できる場合があります。ただし、このワクチンは、生きているウイルスを弱毒化したものを接種する生ワクチンと呼ばれるもので、一部の免疫を抑える治療を開始してしまうと受けることができません。ワクチン接種に関しては、主治医の先生に是非ご相談してみてください。

また、IBDは全身性の病気であることを再認識し、どんな合併症が起こり得るのかを知っておくことも大切です。

例えば「結節性紅斑」という合併症は、IBDを発症したての頃に、足に赤いニキビを潰したような発疹がたくさんできます。これは、IBDの治療で良くなるのですが、IBDが原因で出ていると早くから気付くことができれば、それ以上悪化するのを防ぐことができます。合併症についてきちんと知っておくことで、皮膚のトラブルや腰痛など、一見、IBDとは無関係に思える症状が出た時でも「もしかしたら合併症かもしれない」と主治医の先生に伝えることができ、合併症の早期発見にもつながります。万が一、主治医の先生が判断に迷った場合でも、早期に大学病院などに紹介していただくこともできます。

潰瘍性大腸炎の痔とクローン病の痔の違いは?

――「痔が治らず困っています。内科の先生には外科を受診するように言われ、外科の先生には潰瘍性大腸炎なので手術はできないと言われてしまいました」。このような場合の先生の見解をお聞かせください

潰瘍性大腸炎に伴って痔が悪化する場合があります。理由としては、頻便であることが挙げられます。また、洋式便座は肛門に圧がかかるようになっているので、トイレに座っている時間が長くなることで血流が一点集中し、痔になったり、痔が悪化しやすくなります。基本的には、潰瘍性大腸炎が良くなることで頻便やトイレにいる時間も短くなるので、痔も良くなることが多いです。まずは、現在のIBD治療が適切なのか確認することがポイントです。

また、“潰瘍性大腸炎の病変がある”直腸と、“痔ができる”肛門はつながっています。つまり、潰瘍性大腸炎は肛門のすぐ上から炎症が始まるので、痔の手術をすると潰瘍性大腸炎の病変を刺激してしまい、出血が続いたり、さらに合併症を引き起こしてしまったりすることもあります。そのため、「まずは直腸の状態が良くならないと痔の手術はできない」とする外科の先生は少なくありません。また、病態が良くなっていないうちに痔の治療をしてしまうと、直腸の炎症から波及して、またすぐに痔になってしまうこともあります。そのため、まずは軟膏を使って痔の痛みを抑えながら、潰瘍性大腸炎の治療を続けましょう。直腸の炎症が落ち着いてくれば外科的な処置ができるようになりますし、病態の改善だけで痔が良くなる方もおられます。

――痔というとクローン病のイメージも強いですが…

痔と言っても、潰瘍性大腸炎とクローン病の肛門病変は全く異なります。潰瘍性大腸炎に伴う痔は、血流が溜まったことによる「血の瘤(こぶ)」によるものが多く、内痔核、外痔核と呼ばれます。これに対し、クローン病の痔は、腸の雑菌や炎症物質が肛門と直腸のポケットのような窪みに入り込み、膿となる「炎症」によるもので、肛門周囲膿瘍、痔瘻などと呼ばれます。血の瘤ができてそれが固定化したのが潰瘍性大腸炎の痔、炎症が奥深くに生じるのがクローン病の痔と理解していただければと思います。

――潰瘍性大腸炎の症状が良くなったり悪くなったりを繰り返している患者さんで、内痔核が一向に良くならず出血もある場合、軟膏を塗る以外の改善策はないのでしょうか

軟膏を塗るだけでは良くならない内痔核に対しては、「寛解期に根治治療」をお勧めしています。具体的な治療法としては、瘤となっている血管を医療用の輪ゴムで縛り、その血管を断つ、「結紮(けっさつ)」という方法、フェノールアーモンドオイルを痔の周辺に注射して血管を線維化させ血が溜まらなくする方法、ジオン(ALTA)という薬剤を注射して痔を固めてしまう痔核硬化療法などがあります。いずれも寛解して初めて行える治療ですので、寛解したタイミングで肛門外科にご相談いただくのが良いと思います。

(IBDプラス編集部)

猿田雅之先生
東京慈恵会医科大学 内科学講座/消化器・肝臓内科 主任教授
猿田雅之先生
1997年 東京慈恵会医科大学 医学部医学科卒業
2002年 東京慈恵会医科大学 第一内科学教室助手
2005年 米国Cedars-Sinai Medical Center, Inflammatory Bowel Disease Center博士研究員
2012年 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 診療医長、講師
2013年 東京慈恵会医科大学(学校法人 慈恵大学)大学評議員
2016年 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 主任教授

〈資格・所属学会〉
医学博士、日本内科学会(認定内科医、総合内科専門医、指導医)、日本消化器病学会(消化器病専門医、指導医、財団評議員)、日本消化器内視鏡学会(内視鏡専門医、指導医、学術評議員)、日本カプセル内視鏡学会(カプセル内視鏡認定医、指導医)、日本消化管学会(胃腸科専門医、指導医)、日本小腸学会(理事)、日本炎症性腸疾患学会(総務委員会委員長)、厚生労働省研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班 研究分担者、NPO法人 日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)理事、英文誌 Internal Medicine(日本内科学会英文学会誌)編集委員等、所属学会および資格・役職多数。

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