強みを活かした「前向き」な就職・転職のサポートを

ライフ・はたらく2017/10/16

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有効求人倍率が1.52倍と高水準で推移している昨今(※)、人材マーケットはますます活気づいています。そうした市場感を背景にして、キャリアアップや給与の向上を目指し、前向きな就職・転職に挑戦する方も増えてきています。しかしながら、潰瘍性大腸炎やクローン病を抱える方々のなかには、症状が軽く寛解が続いていて、健康な人とほとんど同じように働ける方もいれば、症状が重かったり障がいがあって、「そもそも仕事に就くこと自体、難しい」「転職するなんてイメージが湧かない」と、就職・転職に対してポジティブに向き合えない方もいらっしゃるかもしれません。

※2017年8月有効求人倍率/厚生労働省発表

難病を抱える方に、新しい一歩を踏み出せる就職・転職サービスを提供しているのが、株式会社ゼネラルパートナーズ。「不自由を解消する事業を通じて今までにない価値と機会を切り拓く」をクレドに掲げる同社は、障がいのある方向けの総合就職・転職サービス『アットジーピー』(https://www.atgp.jp/)を提供しています。

今回は、同社でキャリアアドバイザーとして活躍する品田明恵さんに、障がい者の就職・転職支援の動向や、潰瘍性大腸炎・クローン病の方々の転職成功事例などをお伺いしました。

ゼネラルパートナーズ 転職支援グループ キャリアアドバイザー 品田明恵さん

品田明恵さん
2012年9月ゼネラルパートナーズ入社。コミュニケーションを大事にした信頼感のあるカウンセリングをモットーに、転職だけに終わらず、企業内で長く活躍できるように支援を手がけている。

障がい者雇用の採用マーケットは年々活性化している

――まずは、障がい者雇用の全体感について教えてください。

品田: 厚生労働省は、障がい者雇用促進法に基づき、民間企業などに対し「常時雇用している労働者数」の一定の割合に相当する人数以上の障がい者を雇用することを義務づけています。2017年10月現在、義務付けられている障がい者の「雇用率」は民間企業で2.0%です。これは、従業員数50人あたり1名雇用しなければならない、という計算です。この「法定雇用率」について、2018年4月からは2.2%に引き上げられ、さらにその後、2.3%に引き上げられることが決定しています。そしてその後も「法定雇用率」は高まっていくことが予想されます。

一方で、現在の民間企業の実際の雇用率は1.92%と、目標を達成できていません。今後障がい者の「法定雇用率」は引き上げられていく流れにも関わらず、その分の雇用ができていないことからもわかるように、需要と供給にギャップがある状況といえます。

また、「法定雇用率」の2.0%が達成できている企業は、全体の約49%にとどまっており、半数以上の企業では達成できていません。企業規模としても、大企業に比べて中小企業は実際の雇用率が低く、苦戦しています。

――ゼネラルパートナーズに求人を依頼する企業はどんな業種や規模が多いのでしょうか

品田: もちろん、大企業からの求人も多くありますが、近年では上述のような背景もありまして、中小企業からのニーズも高まってきています。求人数も増加傾向にありますね。

さまざまな業界・業種の企業とお取り引きをさせていただいてますが、ここ近年では、IT、サービス業といった企業が多くなっています。

難病の方が障がい者雇用を利用するメリットとは

――潰瘍性大腸炎やクローン病など難病の方が、”一般雇用”ではなく”障がい者雇用”を利用するメリットは、どのような点にあるのでしょうか。

品田: はい。大きく2つあると思います。まず1つ目は、上述のように「法定雇用率」があるため、企業の採用ニーズが高く、就職・転職において有利に働きやすいということです。そのため、40代や50代といった中高年層でも採用に至るケースが多くあります。

2つ目として、一般雇用の枠で就職・転職すると、「障がいに対する理解が乏しい環境の中で働かざるをえない」というケースも多々あります。しかし、障がい者雇用の場合は、周囲からさまざまな配慮を得たうえで働けるというメリットがあります。例えば、残業や肉体労働への配慮、食事会や飲み会参加などへの配慮です。こうした配慮があれば、安心して就業できると思います。

――実際に、どのような方が御社に登録されるのでしょうか。

品田: 年齢は本当に幅広く、18歳から62~63歳くらいの障がいのある方が、弊社にご登録にされています。そのなかでも、特に多いのは30~40代の方ですね。また、近年では、50代以上の方も増えている実感があります。

「知り合いに勧められて」という方もいらっしゃれば、「インターネットで検索して見つけた」という方もおりまして、当社を知った理由もさまざまですね。

――御社のサービスを利用される潰瘍性大腸炎やクローン病の方は?

品田: 全体的な傾向と同じように、30代以上の方が多くいらっしゃいます。私自身、直近では50代以上の方3名の就職支援をさせていただきました。その中の2名はおよそ2か月で就職先が決まり、残る1名は現在も就職活動中です。

なお、ほかの難病の方に比べて潰瘍性大腸炎やクローン病の方の場合は、比較的自己管理ができていたり、寛解状態にある方が多く、仕事への支障が少ないケースが多いという印象があります。

――御社のサービスを利用すると、どのような流れで採用支援を受けられるのか教えてください。

品田: まずは、Webにて当社サービスにご登録いただきます。その後、弊社からご連絡して日程調整を行い、ご来社いただいてキャリアカウンセリングを実施します。時間としては約2時間程度ですね。

キャリアカウンセリングでは、これまでのご経歴やご希望の条件などをじっくりとお聞きします。マッチした求人があれば、求人票をお渡しし、検討していただきます。面接に進む場合は、応対の仕方をアドバイスしたり、企業側との条件面の交渉なども私たちが支援させていただきます。

潰瘍性大腸炎やクローン病の方ですと、例えば定期的な水分摂取や、食事管理に伴う飲み会や宴会の不参加といったご要望をいただくことが多く、こうした希望条件も私たちを介して企業側にお伝えし、交渉していきます。

――登録から内定までの期間は、おおよそどのくらいかかるものなのでしょうか?

品田: ケースバイケースではありますが、スムーズな方ですと1か月くらいで内定に至るケースもありますね。

これまでの経験・専門性を発揮して、転職を成功させる

――実際に品田さんが就労支援をされた方の実例をご紹介ください。

品田: 最近では2名の転職をサポートさせていただきました。まず1人目は50代の男性です。数年前にクローン病を発症して大腸を全摘出し、人工肛門で生活をされている方でした。ご家族もいて、育ち盛りのお子様も。しかも、発症後のはじめての転職で、大きな不安を抱えていらっしゃいました。

――無事に転職はできたのでしょうか。

品田: 約1か月半の転職活動期間を経て、無事に内定が出ました。発症以前には、大手企業でシステムの営業支援をされていた経験をお持ちでしたので、その知識を活かせる事務職に内定しました。希望給与も折り合いがつき、これからご入社される予定です。

――それでは次に、2人目の実例もお教えください。

品田: 2人目は、30代の男性です。約10年前にクローン病が判明し、状態もなかなか安定せずに大腸を全摘出。また、治療に使用されるステロイドの影響で下肢に壊死があり、第2種障がい者手帳をお持ちの方でした。

アパレル業界のご経験が長い方で、クローン病発症以前にはアパレルの販売スタッフや、人事や物流事務といった職種のご経験がありました。アパレル業界以外に転職したものの雰囲気に馴染めず、「再度、自由な社風が感じられるアパレル業界で働きたい」というご要望をお持ちでした。これまでの経験が見込まれ、成長中のアパレル企業の事務職に無事に内定しました。

――サポートするのは、どのような職種が多いのでしょうか?

品田: 多いのは、事務職です。その他は、軽作業的な仕事も多くあります。例えば、アパレル企業のバックヤードでのお仕事や、オフィス内で資料をスキャンするお仕事、また、企業内に設置されているカフェでのお仕事などです。

――特有の知識・スキルを生かした仕事というのもあるのでしょうか?

品田: もちろんあります。例えば、これまでにエンジニアリング系の仕事をされてきた方であれば、SEとして転職し、実力や専門性を発揮されている方もいらっしゃいますね。

――給与に関してはいかがでしょうか?年収ダウンを想像してしまう方が多いような気がしますが。

品田: 仰るとおり、「障がい者雇用=給与が低い」という先入観をお持ちの方もいらっしゃいます。しかしそれは、「ご本人の経験」と「今後の仕事」の掛け算です。先ほどお話ししたように、エンジニアなど専門性や得意領域のスキルを生かした仕事に就けば、給与が以前よりもアップする事例も少なくありません。

――最後に、これから就職・転職するIBDの方へ、アドバイスをいただけますか。

品田: 「企業に対して安心材料を伝える」ということを意識してほしいと思います。これまでの症状を事実ベースで伝えることも必要ですが、それだけでは採用する企業側も不安になります。症状に対して、どのように自己管理・コントロールしているのかを伝えるようにしてください。面接でも、話をマイナスで終わらせるのではなく、プラスの表現で伝えることが大事になりますね。

(取材・執筆:眞田 幸剛)

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