XIAP欠損症に合併したIBDと腸内細菌叢の乱れ、造血細胞移植で改善
XIAP欠損症に合併のIBDは幼少期に発症、難治で有効な治療法も限定的
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 小児地域成育医療学講座の金兼弘和寄附講座教授らの研究グループは、慶應義塾大学ならびに全国の諸施設との共同研究で、「XIAP欠損症」に合併した炎症性腸疾患(IBD)では、腸内細菌叢の異常が発症に関与している可能性を示しました。さらに、この異常が造血細胞移植で改善することも明らかにしました。
XIAP欠損症は、XIAP遺伝子の異常によって起こるまれな先天性免疫異常症で、ほぼ男児にのみ発症します。免疫異常によって血球減少や肝脾腫などを呈する血球貪食性リンパ組織球症(HLH)や、難治性のIBDを合併するという特徴があります。XIAP欠損症に合併したIBDは幼少期に発症し、症状も重篤である一方、病態は不明な点が多く、有効な治療法が限られているなどの問題があります。
XIAP欠損症の唯一の根治治療法が「同種造血細胞移植(HCT)」ですが、国際的な移植成績は芳しくなく、改善が急がれています。
移植治療後の腸内細菌叢の改善が小児IBD治癒に関連の可能性
研究グループは今回、日本におけるXIAP欠損症患者の移植成績、移植前後でのIBDの病勢変化、腸内細菌叢の組成と多様性を解析しました。その結果、2020年3月末までに26症例でHCTが行われており、生存率は84%と、諸外国に比べて非常に優れた成績であることがわかったそうです。さらに、XIAP欠損症に合併したIBDが、HCTにより完治することが明らかになったとしています。
続けて研究グループは、XIAP欠損症に合併したIBDがHCT後に改善した理由を探るため、移植前後で腸内細菌叢の変化を調べました。その結果、HCT前に特定の腸内細菌が減少し、HCT後には健康な家族と同レベルまで増加することが明らかになりました。
また、これらの腸内細菌には、「腸管を適切な状態に保つはたらき」があること、「減少するとクローン病における抗TNF-α治療の抵抗性を高める可能性」があること、などが示唆されたそうです。
「XIAP欠損症のみならず、先天性免疫異常症に合併したIBDの病態解明や新規治療方法の開発に大きく貢献することが期待される」と、研究グループは述べています。
家族や周囲の大きなサポートが必要となる小児IBDにおいて、新しい治療法の可能性が見えてきたことは大変喜ばしいですね!引き続き、注目していきたいと思います。
(IBDプラス編集部)
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