鎮痛薬として知られる「オピオイド」が腸の免疫細胞にも作用しIBDを改善させる可能性
ニュース | 2021/10/11
KNT-127の投与で、IBDモデルマウスの病態が改善し体重減少が軽減
東京理科大学先進工学部生命システム工学科の西山千春教授、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の長瀬博特命教授らの研究グループは、オピオイドが免疫細胞の炎症反応を制御し、炎症性腸疾患(IBD)を緩和する可能性を明らかにしたと発表しました。
オピオイドは、痛み、かゆみ、感情、自律運動などに幅広く作用する物質で、主に脳などの中枢神経系における作用が着目され、研究が進んでいます。その中でも「δオピオイド受容体(DOR)作動薬」と呼ばれるオピオイドは、他のオピオイドに比べて副作用が少ないことから注目を集めており、うつに対する作用や、免疫に関連する働きが報告されていました。
研究グループは今回、長瀬特命教授が開発したDOR作動薬「KNT-127」が、IBDモデルマウスの免疫細胞の炎症制御にどのような影響を与えるかを調べました。その結果、病理学的な評価となる疾患活動性指標(DAI)の改善、体重減少の軽減、萎縮による大腸長の短縮の減少など、改善が見られました。
KNT-127には免疫細胞の働きを調節し、大腸炎症状を改善させる働きがあった
また、KNT-127の投与により大腸炎改善効果が得られる際に脳などの中枢神経系には悪い影響がないこと、腸内細菌にも影響しないということが、動物実験レベルで明らかになりました。さらに細胞を用いた実験などで詳しい解析をした結果、この薬がマクロファージという免疫細胞に直接作用して、炎症性サイトカイン(TNFαやIL-6)の産生を抑える効果があること、そして、制御性T細胞という、炎症を抑える細胞が増えるのを促す作用があり、こうした作用により大腸炎が抑えられていることがわかりました。
今回の研究により、KNT-127には、大腸やその近くの組織で免疫細胞の働きを調節する機能があり、大腸炎症状を改善することが示されました。これは、オピオイドが免疫調節薬として開発される新たな可能性を示す結果だといいます。
西山教授は「近年では、脳腸相関という、ストレスが腸の健康状態を悪化させたり、腸での炎症が脳の健全性に影響を及ぼしたりといった、脳と腸が密接に関係し合う現象に関する研究が注目されている。引き続き詳細な解析を進めることで、免疫疾患や神経疾患を治療する新たなアプローチ開発につながることが期待される」と述べています。
(IBDプラス編集部)
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