大腸に入り込んだ消化酵素を分解する腸内細菌を発見、新型コロナ軽症化にも関与
消化酵素は大腸で働くと悪さをする可能性、腸内細菌はそれを防いでいるのか?
理化学研究所、慶應義塾大学、かずさDNA研究所の研究グループは、タンパク質を分解する消化酵素「トリプシン」を分解する腸内細菌を同定し、このトリプシンの分解が、細菌やウイルスなど病原体の感染防御に寄与していることを突き止めたと発表しました。
ヒトの消化管には500~1,000種類の腸内細菌が生息し、その数は約100兆個にのぼると言われています。これら腸内細菌は多種多様な機能を持ち、健康と密接に関わっています。しかし、個々の腸内細菌の役割については、未解明の部分が多く残されています。
消化管内には、食物を分解して栄養を吸収するため、消化酵素が豊富に存在しており、主に口腔・胃・小腸内で糖質やタンパク質、脂質を分解し、小腸粘膜での栄養吸収に重要な役割を担っています。しかし、これらの消化酵素の働きが活発なまま大腸内に存在すると、腸管内で大事な働きをしている糖やタンパク質を分解し、悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで研究グループは今回、「消化酵素の制御における腸内細菌の役割」を解明すべく、研究を行いました。
特定の腸内細菌が、消化酵素「トリプシン」の分解を促し病原体侵入を防止
まず、腸内細菌が腸管内に存在するどのようなタンパク質に影響を与えているかを探索するため、マウスを用いた研究を実施しました。その結果、トリプシンが無菌マウスの盲腸内には多量に存在していたのに対し、通常マウスの盲腸内や便中には、ほとんど存在しないことが判明。これにより、腸内細菌の有無で「トリプシン」の量や活性に、著しい差があることが明らかになりました。
さらに、健康なヒトの便を定着させたマウスを用いて調べた結果、「P. clara」という腸内細菌がトリプシンの分解に関与していることを発見。P. claraの腸内トリプシン分解により腸内にIgAが多い状態を維持し、病原体の侵入を防止していることを突き止めました。また、この分解には「00502遺伝子」が必須ということも判明。新型コロナ患者さんの便を調べてみると、00502遺伝子が便中に検出された人は下痢の症状が軽く、酸素吸入が必要とならない軽症者の割合も高かったということです。
P. claraを用いた腸管感染症や新型コロナの予防・治療の応用に期待
研究グループは、「今後、P. claraを用いた腸管感染症に対する予防・治療の応用が期待される。また、新型コロナウイルス感染症に伴う下痢症状の軽減や重症化を抑える効果を持っている可能性もあることから、新型コロナウイルス感染症の予防・治療への応用にも期待できる」と、述べています。
(IBDプラス編集部)
IBDプラスからのお知らせ
治療の選択肢が広がる「治験」に参加してみませんか?IBD治験情報サービスへの無料登録はこちら会員限定の情報が手に入る、IBDプラスの会員になりませんか?
IBDプラス会員になるとこんな特典があります!
- 1. 最新のニュースやお得な情報が届く
- 2. 会員限定記事が読める
- 3. アンケート結果ダウンロード版がもらえる