潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎 | 2020/3/9 更新
潰瘍性大腸炎とはどんな病気?
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜で広範囲に連続した炎症が起こる疾患です。この炎症は、体内に侵入してきた異物を排除するはずの免疫が、なぜか大腸粘膜を攻撃してしまうために起こると考えられています。代表的な症状は、慢性的な腹痛、下痢、血便、排便の切迫感、便を漏らしてしまうなどです。排便後も残便感があり、排便したいときのような腹痛が続く「しぶり腹」という状態になることも、しばしばあります。
診断に必要な検査
潰瘍性大腸炎と似た症状を示す病気はほかにもあるため、自覚症状だけではこの病気かどうかはわかりません。そこで様々な検査が必要になります。
血液・便・尿検査などから炎症の程度を判断するとともに、X線検査、超音波検査、コンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、大腸内視鏡検査などで撮影した画像から、病変の位置や広がりなどの全体像を把握します。大腸内視鏡検査のときに、一部の病変を採取して、それを電子顕微鏡で観察することで、潰瘍性大腸炎に特徴的な大腸組織の変化を確認します(病理検査)。これらの検査結果を総合的に判断し、ほかの大腸炎ではないことが確認できた場合に、潰瘍性大腸炎と診断されます。
病型・重症度・病期
潰瘍性大腸炎は、病変の広がりや、血便の有無、症状の重さによって、病型・重症度・病期別に分類されます。これらの分類は、検査結果に基づいて行われます。
潰瘍性大腸炎の病型は、病変の範囲によって、3種類に分類されます。
- 直腸炎型…直腸のみに炎症がとどまっている
- 左側大腸炎型…直腸からS状結腸、下行結腸へと広がっている
- 全大腸炎型…大腸全体に広がっている
潰瘍性大腸炎の重症度は、排便回数や血便の有無などといった臨床症状と血液検査値を総合することで、「軽症」、「中等症」、「重症」の3種類に分類されます。大腸内視鏡による大腸粘膜の状態からも同様に重症度が決定されます。
潰瘍性大腸炎の病期は、血便の有無と大腸内視鏡の検査結果から、2種類に分類されます。
- 活動期…現在炎症が続いている
- 寛解期…炎症が治まっている
潰瘍性大腸炎の治療
治療の目標
潰瘍性大腸炎は現在、原因不明で根本治療がないため、いわゆる完全に治ること(治癒)は難しい病気です。しかし、治療の進歩により、多くの方がふつうの生活を送ることができるようになりました。治療では、炎症を抑え込んで、日常生活に支障のない状況を目指します。
潰瘍性大腸炎の治療では、炎症状態の経過を踏まえ、活動期に炎症を抑えて寛解に持ち込むことを「寛解導入治療」、寛解となった状態を維持することを「寛解維持治療」といいます。
寛解導入治療
寛解導入治療は、まず薬で炎症を鎮静化させます。急激に症状が悪化して生命の危険を伴う劇症型については、状況によって外科による手術が必要です。
薬剤による治療では、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤と呼ばれる治療薬が基本になります。これで炎症が治まらない場合はステロイド薬を用います。ステロイド薬が無効な場合は、炎症を引き起こす原因となっている過剰な免疫反応を抑える免疫調節薬、生物学的製剤、血球成分除去療法といった治療法のいずれかを併用します。
外科手術は、劇症型や大腸に穴が開いたり(穿孔)、大量出血がある場合、中毒性巨大結腸症やがんなどの合併症を生じるなど緊急の場合や生命維持に困難をきたした場合に行われます。
寛解維持治療
寛解維持期には、5-ASA製剤あるいは免疫調節薬の服用を続けていきます。
- 参考文献
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日比紀文、久松理一編集:IBDを日常診療で診る,羊土社,2017
日比紀文監修、横山薫ほか編集:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト,羊土社,2017
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