潰瘍性大腸炎患者さんが抱える困り事～web調査結果について

ニュース｜ 2020/3/6

URL
copied

潰瘍性大腸炎（UC）の代表的な症状として下痢、血便、腹痛が挙げられますが、患者さんの日常生活、ひいてはQOLに大きく影響を与える症状とはどのような症状なのでしょうか？

株式会社QLifeでは、国内におけるUCの諸症状がある患者さんの割合（有症率）や、それぞれの症状の原因となっている因子（背景因子）などの実態を明らかにすることを目的に、IBDプラス会員をはじめとしたUC患者さんの協力のもと、インターネットによるアンケート調査を実施しました（調査依頼： EAファーマ株式会社、キッセイ薬品工業株式会社）。

この度、調査結果がまとまり、医学雑誌の『Inflammatory intestinal diseases』に掲載されましたので、調査結果と調査にご参画いただいた先生方のコメントをご紹介します。

アンケート調査にご協力いただいたのは、501名のUC患者さん（女性：278名、男性：223名）、平均年齢は39.83歳で、罹患期間は平均7.55年でした。

今回の調査結果から、下痢、血便、腹痛といった代表的な症状に加え、排便の切迫感、便もれといった症状も、患者さんにとって改善したい症状であることがわかりました（図1）。実際に、直近2週間で「トイレに間に合わないのではないかと不安になって困った（排便の切迫感）」方は56.1％、「下着を汚してしまったことがある（便もれ）」方は28.7％いました（図2）。

図1

図2

今回の調査では、UCの症状について、医療スタッフへ相談しにくい症状や悩みがあるかも伺いました。すると、改善したいUCの症状のうち、医療スタッフに相談しにくい症状として最も多かったのは、「便もれ（便失禁）」でおよそ30％、次いで「残便感」と「排便の切迫感」がそれぞれおよそ12％でした（図3）。

図3

北里研究所病院
炎症性腸疾患センター長
日比紀文先生

本調査にアドバイスをいただいた北里研究所病院　炎症性腸疾患センター長　日比紀文先生は、「本調査の結果から、UC患者さんは排便の切迫感、便もれといった症状に関して、UCの代表的な症状である下痢、血便、腹痛と同様に、日常生活に影響し、改善したいと願っていることを再確認することができました。一方で、切迫感や便もれに関しては、患者さんが改善したいと考えているものの、医療従事者には相談しにくい症状であることもわかりました。私たち医療従事者側は患者さんに寄り添って適切に症状を聞き取り、患者さんが快適な生活を送れることを目指してサポートしていくことが必要だと改めて感じています。」とコメントされています。

北里研究所病院
炎症性腸疾患センター
IBD専任看護師
石橋とよみさん

また、同じく今回の調査項目策定に協力いただいた同センター　IBD専任看護師　石橋とよみさんからは、「今回の調査結果は、実臨床を反映したものです。特に便もれは、患者さんの自尊心が傷つき精神的に大きなショックを受けるものだと思います。便もれを心配して、おむつや女性用ナプキンを着用しながら仕事をしている患者さんもいらっしゃいます。困っていることは一緒に解決方法を見つけていければと思いますので、医師に相談しにくい場合は看護師など話しやすい相手を見つけて相談してほしいと思います。UCは「一生付き合う」疾患であるからこそ、患者さんもチーム医療の一員として、よりよい生活を目指していけたらと思います。」とコメントされています。

北里研究所病院
炎症性腸疾患センター
副センター長
小林拓先生

最後に、同センター　副センター長の小林拓先生からは、「今回の調査で患者さんの悩みとしてクローズアップされた、排便の切迫感や便もれといった症状は、便をためておく直腸の炎症が原因であるため、まずはそこをしっかりと治療することが大切です。このように症状に応じた適切な治療を提供するためにも、困っていることがあれば積極的に医師やスタッフに相談してほしいと思います。今後、便意切迫や便もれの症状に着目した臨床研究等を実施し、患者さんにとってより適切な治療方法を明らかにしていきたいと思います。」とコメントされています。

UCの症状をうまくコントロールして、毎日の生活をより快適に過ごすために、皆さんもぜひ、気になる症状があれば遠慮することなく、医療スタッフに相談してみましょう。（IBDプラス編集部）

この記事が役立つと思ったら、
みんなに教えよう！