狙った細菌だけ殺菌できる抗菌薬を開発、腸内細菌叢から病気の原因菌だけ除ける可能性

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2020/6/15

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臨床で使用されているほぼ全ての抗菌薬に耐性菌が出現

自治医科大学医学部感染免疫学講座細菌学部門の崔龍洙教授、氣駕恒太朗講師らの研究グループは、RNA標的型CRISPR-Cas(CRISPR-Cas13a)の遺伝子群をバクテリオファージに搭載することで、特定の遺伝子を持つ細菌を殺菌できる、新しい殺菌技術を開発したと発表しました。

抗菌薬の使用から間もなく「薬剤耐性菌」が報告され始め、今や臨床で使用されているほぼ全ての抗菌薬に耐性菌が出現しています。一方で、新しい仕組みで殺菌する抗菌薬の開発は進んでおらず、薬剤耐性菌感染症の治療はますます困難になっています。

また、昨今の新型コロナウイルスのように、耐性菌もパンデミックを起こす恐れがあるため、既存の抗菌薬とは異なるメカニズムで殺菌できる抗菌薬や、耐性菌を簡単に検出できる診断システムの開発が求められています。

そこで研究グループは今回、薬剤耐性遺伝子を認識するように設計した「CRISPR-Cas13a」という遺伝子操作システムをバクテリオファージ(細菌に感染するウイルス)に搭載することで、薬剤耐性菌のみを狙って殺菌できる抗菌薬の開発を目指しました。

その結果、狙った細菌を選択的に殺菌できる新規抗菌製剤の作製に成功。「抗菌カプシド」と名付け、いくつかの医学分野で抗菌カプシドを応用できる可能性について検討しました。

細菌叢から狙った1種類の細菌だけを殺菌することに成功

なかでも特に注目したいのが「抗菌カプシドを利用した細菌叢の編集」です。生体細菌叢の乱れがさまざまな病気に関わっていることが明らかになり、国内外で活発に研究が行われていますが、これまでのところ、特定の病気を起こす細菌だけを選んで取り除く方法はありません。また、特定の病気に関連する細菌の発見やそうした細菌に対する抗菌治療も困難です。

抗菌カプシドは細菌叢から狙った細菌のみを取り除くことができるため、この問題の解決に応用できると考えられました。実際に研究グループが検証したところ、3種類の大腸菌を混合した細菌叢から狙った1種類の細菌のみを減少させることに成功したそうです。

研究グループは、「本抗菌薬は核酸医薬品であり、未知の遺伝子を含まず、自己増殖もしないため、安全性の高い薬として実用化しやすいことが期待される」と、述べています。

IBDも、腸内細菌叢が病態に関係する可能性を示す研究報告がいくつかあります。ひょっとしたら将来、安心・安全なIBD治療薬として、抗菌カプシドが使われる日がやって来るかもしれませんね。

(IBDプラス編集部)

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