腸内細菌「バクテロイデス」が肥満を抑制する可能性とそのメカニズムを発見

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2021/11/2

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分岐鎖アミノ酸などの栄養素を利用して熱を作る「褐色脂肪組織」に着目

神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野の吉田尚史研究員、山下智也准教授、平田健一教授らの研究グループは、腸内細菌「Bacteroides(バクテロイデス)」が、褐色脂肪組織の分岐鎖アミノ酸代謝を活発にし、肥満を抑制することを発見したと発表しました。

肥満者数は世界で増加傾向にあります。日本でも肥満に起因する多くの疾患が増加しており、社会問題となっています。

褐色脂肪組織は、分岐鎖アミノ酸などの栄養素を利用して熱を作る臓器で、熱エネルギー消費量を大きくすることにより肥満抑制に働いています。反対に、分岐鎖アミノ酸の利用が低下し熱産生が低下すると、肥満が引き起こされます。しかし、分岐鎖アミノ酸代謝がどのように制御されているのかは不明でした。

バクテロイデスを投与したマウスは体重増加が抑制された

今回、研究グループは、腸内細菌が褐色脂肪組織の分岐鎖アミノ酸代謝を制御しているのではないかと考え、マウスを用いた研究を行いました。

すると、通常のマウスに高脂肪食を食べさせ続けると、分岐鎖アミノ酸代謝が「緩やかに低下」したのに対し、腸内細菌のいない無菌マウスでは分岐鎖アミノ酸代謝が「顕著に低下」したそうです。このことから、腸内細菌が高脂肪食による褐色脂肪組織の分岐鎖アミノ酸代謝の低下に対して、保護的な働きを持つ可能性がわかりました。

次に、バクテロイデスを肥満モデルマウスに経口投与し、肥満を抑える効果や褐色脂肪組織の分岐鎖アミノ酸代謝に与える影響を評価しました。その結果、バクテロイデスを投与したマウスでは、体重増加が抑制されました。

将来的に、腸内細菌を利用した「抗肥満療法」が実現する可能性も

最後に、肥満患者さん7人の糞便を採取後、神戸大学ヒト腸管モデルで培養してバクテロイデスのプロバイオティクスを添加した結果、全例でバクテロイデスの割合が増加。このことは、肥満患者さんがバクテロイデスのプロバイオティクスを摂取したことで、腸内細菌中に占めるバクテロイデスの割合が増加する可能性を示唆するものだと言えるそうです。

今回の研究成果より、腸内細菌バクテロイデスが、褐色脂肪組織の分岐鎖アミノ酸代謝を亢進することで、肥満を抑制している可能性が発見されました。研究グループは「今後、腸内細菌に着目した新たな抗肥満療法の確立が期待されます」と、述べています。

(IBDプラス編集部)

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