潰瘍性大腸炎のマウスに植物乳酸菌がつくる物質を投与すると症状が改善

ニュース2021/11/25

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マウスの接触性皮膚炎を改善させた「EPS」、今度は潰瘍性大腸炎への効果を検証

広島大学大学院医系科学研究科未病・予防医学共同研究講座の杉山政則教授と、同大病院総合内科・総合診療科の医師で臨床創薬学共同研究講座の菅野啓司准教授らの共同研究グループは、潰瘍性大腸炎モデルマウスに、イチジクの葉から取得した植物乳酸菌がつくる細胞外多糖体(exopolysaccharide、EPS)を摂取させることで、モデルマウスの病態と炎症症状を改善することを発見、予防効果も確認したと発表しました。

未病・予防医学共同研究講座では、未病改善と予防医療に有益な植物乳酸菌の研究を行っており、すでに1,000株を超える植物乳酸菌を取得しています。これら保存菌株のうち、イチジクの葉から得られた乳酸菌「Lb. paracasei IJH-SONE68」の産生するEPSが、接触性皮膚炎モデルマウスの症状を改善する効果を2019年に発見しました。

その後に実施した食品臨床研究の効能効果と安全性の検証でも期待通りの結果が得られたことから、炎症性疾患や難治性自己免疫疾患に対する有効性を検証するため、動物実験を行いました。

モデルマウスにEPS摂取で、症状改善と予防効果を確認

研究では、潰瘍性大腸炎モデルマウスを用いて下痢・血便の症状を進行度合いによってスコア化し、EPSを摂取した群としなかった群とで比較しました。その結果、EPSの摂取で下痢・血便ともに改善がみられましたが、IJH-SONE68株が産生する中性と酸性のEPSのうち、特に酸性EPSの摂取が効果を示しました。また、炎症に伴って起きる大腸の萎縮と炎症に関しても、酸性EPSの摂取が特に効果を示したことから、予防効果もあることが明らかになりました。

さらに炎症症状の改善だけではなく、炎症性サイトカインの抑制と、炎症を抑えるサイトカインの発現上昇が確認されたことから、潰瘍性大腸炎治療への応用だけでなく、他の炎症性疾患の治療薬となる可能性も期待されるとしています。

新たな薬剤などの開発につながる可能性

IJH-SONE68株はパイナップル果汁中で培養すると活発に増殖し、多量のEPSを菌体外に分泌するそうです。研究グループは、「得られた果汁醗酵液、もしくは、粉末化した素材をカプセルや錠剤にすることで、潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性自己免疫疾患の予防や改善に有効なサプリメントの製品化が可能となると期待される」と述べており、今後は医師主導型の治験を実施し、将来的には製薬企業とともに医薬品の開発を目指すとしています。

また新たな薬の候補の研究が出てきました。近い将来、イチジクの葉の植物乳酸菌が潰瘍性大腸炎の治療に貢献する日がやってくるのでしょうか?治験の計画もあるようですし、今後が楽しみです!

(IBDプラス編集部)

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