AIを用いた「炎症性腸疾患関連腫瘍」内視鏡診断システムの有用性を検証
ニュース | 2022/7/14
炎症性腸疾患関連腫瘍の進行度を診断できる医師は少なく、内視鏡診断学も未確立
岡山大学学術研究院医歯薬学域の河原祥朗教授、衣笠秀明助教(研究責任者:光学医療診療部)、山本峻平医員(現姫路日赤病院)、岡山大学病院炎症性腸疾患センターの平岡佐規子准教授、株式会社両備システムズの研究グループは、人工知能(AI)を用いた炎症性腸疾患関連腫瘍の内視鏡診断システムを開発し、その有用性を検討したと発表しました。
炎症性腸疾患関連腫瘍には進行度にグレードがあり、Low grade dysplasia(軽度異形成)には内視鏡による局所切除が選択されることもありますが、High grade dysplasia(高度異形成)とがんに対しては、外科手術による大腸全摘が必要とされます。
進行度の診断は病変の内視鏡写真の所見などをもとに行われますが、いまだ確立した内視鏡診断学は存在せず、十分な診断経験をもつ医師も非常に少ないのが現状です。そのため、内視鏡治療も考慮される病変に外科的手術が行われたり、最初から外科的手術を行うべきだった病変に内視鏡治療が行われたりするケースが、少なからず存在します。
開発したAI診断システムの正診率は 79.0%
2019年、研究グループは両備システムズと共同で、炎症性腸疾患関連腫瘍に対する進行度診断を行うAIシステムの試作品を構築。その後改良を重ね、精度の向上を図ってきました。
炎症性腸疾患関連腫瘍に対する治療法を選択する上で、腫瘍を高度異形成もしくはがんと診断できることは非常に重要です。今回、炎症性腸疾患関連腫瘍99病変862枚の画像から構築したAI診断システム用いて、テスト画像への診断精度を検証しました。その結果、AI診断システムによる診断の正診率 79.0%(同画像に対する経験ある内視鏡医の診断の正診率は77.8%)だったということです。
リアルタイムでの内視鏡自動診断を可能にすることを目指して今後も研究を継続
消化器内視鏡診療は、経験に基づく診断も重要な因子となります。そのため、個々の医師により診断能にはバラツキがあり、今後の診療件数の増加に伴い、さらに病変の見落としや誤診の増加が危惧されています。
今回の研究により、AIによる消化器内視鏡の自動診断が実現されれば、自動診断ロジックを内視鏡機器に付加することで、リアルタイムで内視鏡自動診断が可能になり、現在個々の内視鏡医の診断能に頼っている現況が、大きく改善されると思われます。
「自動診断による治療法の決定などの期待がなされ、国民に対する利益は非常に大きなものになると考えられる。今後さらなる精度の向上、システムの実用化を目指して研究を継続したいと思う」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)
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