潰瘍性大腸炎の難治性潰瘍修復を目指した「自家腸上皮オルガノイド」移植を実施、世界初
ニュース | 2022/7/11
潰瘍性大腸炎における「難治性潰瘍」の組織再生を促す治療法は存在しなかった
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 消化器病態学分野の岡本隆一教授と同大学術顧問・副学長で高等研究院の渡辺守特別栄誉教授らの研究グループは、難治性潰瘍を伴う潰瘍性大腸炎の患者さんに対して、「自家腸上皮オルガノイド」の移植を行う再生医療の第1例目を実施したと発表しました。
潰瘍性大腸炎の病状を寛解に保つためには、症状や炎症だけでなく、「粘膜治癒」を達成することが重要です。しかし、さまざまな治療を行っても腸の修復再生が滞る「難治性潰瘍」のため、粘膜治癒を達成できない潰瘍性大腸炎患者さんに対し、組織再生を促す治療の選択肢は存在しませんでした。
「自家腸上皮オルガノイド」を作製し内視鏡で病変局所に移植済み、今後は経過観察
そこで研究グループは、腸上皮幹細胞を含むオルガノイド(=ミニ臓器)を、潰瘍性大腸炎患者さん自身から採取した少量の組織から樹立(培養)し、大量に増やした上で、内視鏡を使って移植する技術を開発。さらに、同技術を用いて潰瘍性大腸炎患者さんの難治性潰瘍に対し、自家腸上皮オルガノイドを移植する臨床研究を開始しました。
臨床研究計画に基づき、内視鏡を用いて難治性潰瘍を伴う潰瘍性大腸炎患者さんから少量の粘膜組織を採取し、患者さん自身の腸上皮幹細胞を含む「自家腸上皮オルガノイド」を樹立。さらに、これを定められた手順・期間に計画通り培養し、必要な規格を備えた自家腸上皮オルガノイドを、移植に必要な量まで増やすことに成功しました。
さらに、内視鏡を用いて標的となる病変に自家腸上皮オルガノイドを送り届け、局所に留めるための一連の処置まで完了したということです。研究グループは引き続き、移植後の経過観察を行っていくとしています。
クローン病に対するオルガノイド医療の開発が進むことにも期待
今回、自家腸上皮オルガノイドを潰瘍性大腸炎患者さんに移植する臨床研究が、世界で初めて実施されました。これは、革新的な技術により培養されるオルガノイド(=ミニ臓器)を移植治療に用いた世界初の実施例でもあり、さまざまな臓器におけるオルガノイド医療の実用化に道を開く第一歩となる成果を達成したと言えます。
今後、同技術を用いた2例目以降の移植が計画されており、潰瘍性大腸炎に対する自家腸上皮オルガノイド移植の安全性や効果が明らかになることが期待されます。
「本技術を応用・展開することによりクローン病など、他の消化管難病に対するオルガノイド医療の開発が進むことも期待できる」と、研究グループは述べています。
(IBDプラス編集部)
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