「D-トリプトファン」に腸炎予防効果、IBDに対する効果も期待

ニュース2022/8/23

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D-アミノ酸に、腸内環境を健全に保つ役割はあるのか?

慶應義塾大学と明治ホールディングス株式会社を中心とする研究グループは、D-アミノ酸の一つである「D-トリプトファン(D-Trp)」が、腸内の病原細菌や病原性片利共生細菌の増殖を抑え、腸炎を予防することを発見したと発表しました。

アミノ酸には、D体とL体があり、これらはお互いに鏡に映すと一致するような構造の違いを持っています。L-アミノ酸はタンパク質の構成要素として機能するため、生命に不可欠であることが広く知られていますが、D-アミノ酸の機能については、長い間不明でした。また、以前は哺乳動物の生体内にはD-アミノ酸は存在しないと考えられていました。しかし、分析技術の進歩により、D-アミノ酸は哺乳類の生体内に存在し、生理機能に重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。

また、腸内細菌によっても多様なD-アミノ酸が作られており、腸内に存在しています。D-アミノ酸は「強力な殺菌作用」を持つことが知られており、外来からの病原性細菌の増殖を阻止し、腸内細菌叢のバランスを維持する上で重要な役割を果たしていると考えられます。しかし、D-アミノ酸が腸管病原細菌や腸内細菌に与える影響については、不明な点が多く残されていました。

そこで研究グループは今回、「D-アミノ酸が腸内で有害な細菌に直接的に作用し、腸内環境を健全に保つ役割を果たしているのではないか?」との仮説を立て、研究を行いました。

「D-トリプトファン」が腸管病原体感染後のマウスの生存率を改善

まず、腸管病原細菌の増殖における各D-アミノ酸の阻害効果を試験管内で比較しました。その結果、D-アミノ酸の中でも特に「D-メチオニン(D-Met)」「D-トリプトファン(D-Trp)」が、マウスの腸管病原体の増殖を抑制することがわかりました。

さらに研究を進めると、D-Metの投与では、腸管病原体感染後のマウスの生存率は大きく上がらず死亡日数を延長するのみだった一方、D-Trpの投与は、腸管病原体感染後のマウスの生存率を用量依存的に改善することがわかりました。

D-Trpには腸内細菌によって引き起こされる腸炎に対する防御作用もあると判明

次に、D-Trpがマウス腸内の腸管病原細菌の増殖を阻害できるかを観察した結果、「D-Trpは腸管病原細菌の腸内での増殖を抑制することで、致死的な腸管感染症を防いでいる」ということが判明したそうです。

さらに、ヒト潰瘍性大腸炎モデルマウスを作製する際に使用する、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いた実験を実施。通常、DSSをマウスに投与するとIBD(炎症性腸疾患)様腸炎が引き起こされますが、D-Trp投与マウスでは、DSSを飲ませても体重はほとんど低下せず、腸炎も引き起こされなかったということです。

以上の結果から、D-Trpは腸内細菌によって引き起こされる腸炎に対する防御作用もつこと、D-Trpが特定の腸内細菌(病原性片利共生細菌)を減少させることで、大腸炎を抑制していることなどが明らかになりました。さらにこれは、D-Trp投与によって菌体内で増加する「インドールアクリル酸」が、腸管病原細菌の増殖を抑制するためだということもわかりました。

D-Trp のIBDや感染性腸炎への効果に期待

腸内細菌叢は、私たちの健康状態に大きく影響を及ぼしていると考えられます。今回の研究では、D-アミノ酸の新たな役割が発見されました。

「D-Trpは、腸炎惹起性の細菌に直接的に作用して増殖を抑制することから、IBDや感染性腸炎に対する効果が期待できます」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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