IBDの炎症を鎮める酵素を発見、新規治療法開発に期待
IBDの発症に関わる「炎症性サイトカイン」
近畿大学医学部内科学教室の渡邉智裕特命教授らの研究グループは、炎症性腸疾患(IBD)の発症メカニズムを一部解明したことを発表しました。
IBD発症の原因の一つとして、通常は免疫反応を起こすことがない腸内細菌に対して腸管の免疫細胞が反応し、「炎症性サイトカイン」を産出することが考えられています。
近年、炎症性サイトカインを中和する薬が開発されたことにより、病状はある程度コントロールできるようになりましたが、その薬を用いて病状が落ち着くのは患者さんの約50%であり、いまだに多くの患者さんが症状に苦しんでいます。また、IBDは病気が長期に及ぶと大腸がんが発生しやすくなるというリスクもあります。このような現状を踏まえ、IBDの発症メカニズムが解明され、それに基づいた新規治療法の開発が望まれています。
NOD2がDUBAという酵素を増加させることで、I型IFNの産生を抑制
研究グループは今回、IBDのモデルマウスを用いて、腸内細菌に対する免疫反応に関連した症状悪化に「I型インターフェロン(以下、IFN)」という炎症性サイトカインが関与することを明らかにしました。一方で、炎症性サイトカインのブレーキとして働く「NOD2」というタンパク質が活性化されると、症状の悪化がほぼ完全に抑制されることも発見しました。
このメカニズムについて検証したところ、活性化されたNOD2が、細胞内のシグナルを調節する役目を持つ「DUBA」という酵素を増加させることで、I型IFNの産生を抑制することが明らかになりました。
「DUBA」を応用した新規治療法開発に期待
さらに、潰瘍性大腸炎とクローン病患者さんの腸管組織を用いて分析したところ、クローン病の腸管粘膜では、治療で炎症が改善するとDUBAの発現量が増加し、I型IFNの産生量が減少することが明らかになりました。
今回の研究により、I型IFNの活性を阻害する酵素「DUBA」が新しい治療に結び付く可能性がある酵素として同定されたことで、完治が難しいとされるIBDの新たな治療法開発につながることが期待されます。
(IBDプラス編集部)
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