早産の自閉スペクトラム症児、定型発達児に比べ「腸内フローラの多様性が高い」と判明
ASDを含む神経発達症児の「腸内フローラの乱れ」が注目されていた
関西医科大学小児科学講座の研究グループは、世界で初めて自閉スペクトラム症(ASD)を持つ早産児の腸内細菌叢(腸内フローラ)の特徴について検証し、発達障害のない定型発達児の腸内フローラと大きく異なることを発見したと発表しました。
ASDは頻度の高い神経発達症の一つで、コミュニケーションや社会性の障害、反復的かつ制限的な行動などを特徴とします。一方で、早産児は運動や言語の発達、認知機能や行動発達に問題が生じるリスクが高く、注意欠如多動症やASDの発症リスクが高いとされています。実際に早産児のASD有病率は8%程度で、通常の約4倍発症リスクが高くなっています。
腸内フローラは、ヒトの腸管内でバランスのとれた群集として共存し、脂質、タンパク質、難消化性物質の代謝や、短鎖脂肪酸の生産を行っています。近年、腸内フローラの乱れがさまざまな疾患の発症に関与することがわかってきています。また、腸内フローラと脳機能の間に「腸脳相関」と呼ばれる相互関係があることが知られ、腸内フローラが脳機能に及ぼす影響も注目されています。
これまで、早産児のASD発症リスクが高いことが知られていましたが、その原因や、どのような子がASDを発症しやすいのかについては不明でした。一方、ASDを含む神経発達症児の「腸内フローラの乱れ」が報告されており、神経発達症児の腸内フローラについての研究が注目されています。
そこで研究グループは今回、早産で生まれたASD児における腸内フローラの乱れの特徴を調べました。
ASDは定型発達児より「腸内フローラの多様性が高い」ことが判明
研究では、在胎37週未満で出生し、5歳時点でASDと診断された子ども7人と、同じく早産で生まれた定型発達の子ども9人を対象としました。
対象者から採取した便中の細菌DNAを抽出して遺伝子解析を行い、腸内フローラの多様性と細菌構成について検討しました。また、腸内フローラに直接影響を与える抗菌薬やプロバイオティクスの使用状況、偏食の有無などのアンケート結果や、出生状況や出生後の治療についても解析しました。
その結果、ASD児のグループは定型発達児のグループに比べ「腸内フローラの多様性が高い」ことが判明しました。
特定の腸内細菌が発症に寄与?今後、病因解明や新規治療法につながることに期待
また、ASD児の腸内に多かった「ルミノコッカス属」は、腸管粘液の主成分である「ムチン」を分解して粘膜層を脆弱化することが報告されています。研究グループは、これにより腸内細菌が血管内に入り込み、ASDの発症に寄与している可能性があるとしています。
今回の研究成果により、腸内フローラの観点からASDの病因を解明することや、腸内フローラをターゲットとしたASDの新たな治療法開発につながることが期待されます。
(IBDプラス編集部)
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