発酵食品に使われる乳酸菌に、腸内環境を変化させて「肥満を抑制」する効果を発見

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2023/2/13

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プロバイオティクスで腸内環境が改善されるメカニズムは不明だった

京都大学と東京農工大学大学を中心とする研究グループは、漬物やキムチのような発酵食品の生産に用いられる乳酸菌の1種「ロイコノストック・メセンテロイデス、以下、メセンテロイデス」が、砂糖を基質として高産生する菌体外多糖「exopolysaccharide(EPS)」を摂取することにより、宿主の腸内環境が変化し、主要な腸内細菌代謝物「短鎖脂肪酸」の産生量を増加させて肥満を防ぐことを、マウスの実験で明らかにしたと発表しました。

近年の欧米食に代表される高糖質・高脂肪な高カロリー食や食物繊維摂取が不足する食生活への変化は、過剰なエネルギー摂取と腸内細菌の構成や機能に影響を及ぼし、その結果、肥満や糖尿病に代表される生活習慣病・代謝性疾患を含むさまざまな病気の罹患率を高めます。

これらのことからも、食事は重要な栄養源であるとともに、腸内細菌に影響を及ぼす主要な因子と言えます。腸内環境に影響を与え、さまざまな健康効果を発揮する手段として、乳酸菌などの微生物を摂取するプロバイオティクス、腸内細菌のエサとなる食物繊維などを摂取するプレバイオティクス、その両方を摂取するシンバイオティクスが知られていますが、近年はそれらに代わり、微生物の代謝産物そのものを摂取する「ポストバイオティクス」も注目されています。しかし、これらの腸内環境改善手段の作用機序は不明でした。

メセンテロイデスのプロバイオティクス効果に「短鎖脂肪酸」が関わるのかマウスで検証

EPSは微生物が菌体表面に分泌・産生する多糖の総称で、環境ストレスなどから保護する役割を持ちます。漬物やキムチのような発酵食品のスターター(発酵食品を製造するときの基礎となる菌)に用いられるメセンテロイデスのような乳酸菌は、このEPSを産生することが知られていますが、発酵食品中に含まれるEPSの摂取で起こる生理機能や腸内細菌叢への影響などについては、詳細な検討が行われていませんでした。

食物繊維などの「難消化性多糖類」は、消化酵素による消化と小腸での吸収を免れ大腸まで移行することで腸内細菌のエサとして利用され、最終代謝産物として短鎖脂肪酸を産生します。この腸内細菌によって産生される最も主要な代謝産物「短鎖脂肪酸」は、エネルギー代謝調節を含むさまざまな生理機能に影響を及ぼし、その結果、肥満・糖尿病などの代謝性疾患や免疫疾患、神経疾患などの改善に寄与することが明らかにされています。

そこで今回の研究では、メセンテロイデスのプロバイオティクス効果の要因として「プレバイオティクスによる短鎖脂肪酸産生が重要ではないか」という仮説のもと、マウスを用いて検証を行いました。

EPS摂取で腸内細菌が変化し短鎖脂肪酸の産生を促進、エネルギー代謝調節にも関与

その結果、メセンテロイデスが産生するEPS摂取がマウスの腸内細菌の構成を変化させ、短鎖脂肪酸(主にプロピオン酸)の産生を促進することが判明。さらに、エネルギー代謝調節に関与することも確認されました。加えて、EPSを利用して短鎖脂肪酸を産生できる腸内細菌種も特定したということです。

血糖上昇抑制・肥満予防を目的とした機能性食品開発に応用できる可能性

今回の研究成果により、メセンテロイデスがEPSを介してプレバイオティクス効果を発揮できる「シンバイオティクス乳酸菌」として、応用できる可能性が示唆されました。

また、EPS自体を肥満・糖尿病に代表される「代謝性疾患予防・治療」のためのサプリメントや機能性食品素材として応用することも期待されます。

研究グループは「食品という観点でも、メセンテロイデスが漬物・キムチなどのスターター乳酸菌であること、EPS産生の基質として砂糖を利用することから、EPS産生量を高めた機能性発酵食品への応用開発、さらには砂糖含有食品摂取時の血糖上昇抑制・肥満予防のためのシンバイオティクス乳酸菌としての応用も期待される」と、述べています。

(IBDプラス編集部)

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