傷ついた組織を修復する「制御性単球」が作られる仕組みを解明、IBDの治療法開発に期待

ニュース2023/4/19

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制御性単球の「炎症抑制」と「組織修復」がIBD治療の切り札に?

東京薬科大学の研究グループは、炎症抑制と組織修復に特化した特殊な白血球「制御性単球」が作られる仕組みを明らかにしたと発表しました。

急性炎症は、体に侵入した病気の原因となる細菌や損傷した組織を排除するために必要な生体応答です。しかし、行き過ぎた炎症は自分自身の組織をも傷つけてしまうことがあるため、炎症の原因が取り除かれた後は速やかに炎症を抑える必要があります。

単球は、急性炎症の誘導と回復期の炎症収束の両方に関わる白血球の一種です。研究グループは以前、炎症回復期の骨髄で爆発的に増産され、炎症組織に動員される特殊な単球を発見しました。そしてこの単球が炎症を鎮め、組織を修復する能力に長けていることにちなみ、一般的な炎症性単球と区別する意味で「制御性単球」と名付けました。

制御性単球の炎症抑制機能と組織修復機能は、炎症性腸疾患(IBD)など、さまざまな疾患治療の切り札になると考えられますが、生体内で制御性単球を産生する仕組みがわかっておらず、治療応用の妨げとなっていました。

ヒトにも、マウスの制御性単球に相当する「CXCR1陽性単球」が存在

そこで研究グループは今回、この仕組みを明らかにするため、平常時と炎症状態における単球分化経路の変化をコンピューターで予測し、その予測が合っているのか、マウスで調べました。

その結果、従来の単球と異なり、制御性単球が炎症状態において好中球だけに分化すると考えられていた好中球前駆細胞から作られることをコンピューターは予測し、実際にマウスでその予測を確認することができました。また、「G-CSF」という好中球を増やすタンパク質の刺激で、制御性単球の産生が加速することがわかりました。

さらに、ヒトにもマウスの制御性単球に相当する免疫調節細胞「CXCR1陽性単球」が存在することを明らかにしました。

制御性単球の産生メカニズムがIBD治療やがん治療に役立つ可能性

今回の研究で明らかにされた制御性単球の炎症抑制機能と組織修復機能は、IBDをはじめ、これまで治療困難だったヒト炎症疾患の治療法開発に応用できるということです。

また、制御性単球の産生を抑えることで、がんなど、免疫が十分に働かないことで悪化する病気の治療にもつながる可能性があると、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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