チオプリン製剤の重篤な副作用、日本人に適切な遺伝的マーカーを同定し診断キットを開発・発売

ニュース2018/7/4

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副作用を心配してチオプリン製剤による治療を諦めるケースも

炎症性腸疾患(IBD)の国内患者数は現在約29万人で、年間約1万5,000人もの人が新たに新規患者になっているといわれています。IBD患者数が増加の一途をたどるなか、東北大学病院消化器内科角田洋一助教らの研究グループは、IBDの治療に用いるチオプリン製剤の重篤な副作用を予測する遺伝的マーカーとして、NUDT15(Nudix Hydrolase 15)遺伝子のコドン139が最も適切であり、同マーカーを迅速に診断できる「MEBRIGHT NUDT15キット」を開発したと発表しました。

この結果は、チオプリン製剤に関する日本人に最も適切な遺伝的マーカーを探索するため、全国32施設による多施設共同研究で収集された2,630人のIBD患者のDNAを解析し、明らかになったものです。チオプリン製剤は、IBDをはじめ、白血病、リウマチ性疾患、臓器移植後の治療に効能効果が認められる安価で有用な薬剤で、日本中で広く使用されています。その一方、日本人を含む東アジア人では同剤を投与した一部の患者さんに、早期に重度の白血球減少症や全脱毛といった重篤な副作用が生じることが知られています。

重度の白血球減少症は、致死的な感染症を合併するリスクを増大させ、発見や治療が遅れると患者さんが死亡するケースもあります。また、脱毛は一度なってしまうと、投与中止後も進行し、完全脱毛にまで至ると回復に数か月以上を要するなど、日常生活に著しい影響を及ぼします。しかし、これまではチオプリン製剤による重篤な副作用の事前予測方法は無いと考えられており、同剤での治療を諦める人や、治療の中断・入院を余儀なくされるケースも少なくありませんでした。

2時間程度で判定、多数検体の同時測定も可能な診断キットを開発・発売

近年、チオプリン製剤の投与による重篤な副作用には、NUDT15遺伝子多型が強く関連していることが発見されました。さらに、東北大学病院消化器内科 角田洋一助教らは、臨床研究プロジェクト「NUDT15 遺伝子多型検査の有用性に関する多施設共同研究」(MENDEL Study)において、日本人のIBD患者さんでは、NUDT15遺伝子のコドン139が、チオプリン製剤の投与による重篤な副作用を予測するための遺伝的マーカーとして最も有用であると報告していました。

これらの結果を受け、研究グループは適切な治療選択に結びつけることを目的に、チオプリン製剤の投与による重篤な副作用に関与するNUDT15遺伝子のコドン139の遺伝子多型の情報を正確かつ迅速に提供できる体外診断用医薬品キットを、株式会社医学生物学研究所(研究開発分担者:阿部由紀子)らと共同で開発しました。開発したキット(製品名:MEBRIGHT NUDT15キット)は、患者さんの血液から抽出されたゲノムDNAを検体に用いてNUDT15遺伝子多型を検出する試薬で、判定までに必要な時間はおよそ2時間程度。多数検体の同時測定も可能と、迅速性に優れています。同製品は、世界で初めて体外診断用医薬品として製造販売承認されました。

このキットの登場で、チオプリン製剤の投与前に、重篤な副作用を発症するリスクの高い患者さんを特定することが可能となり、重篤な副作用を恐れてより高額な別の治療法を選択していた患者さんが同剤を選択できるようになり、医療費の適正化にも貢献するものと期待されます。

なお、医学生物学研究所は同キットについて、7月2日付で新発売したと発表しています。

(IBDプラス編集部)

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