大腸がんの新しいメカニズムが判明、大腸炎症発がんモデルではYAP経路が活性化

ニュース2018/11/30

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炎症などの刺激で起こる前駆細胞の幹細胞化

東京大学医学部附属病院は11月20日、大腸がんのもととなる新たな細胞を発見し、その細胞ががん化するために重要なシグナル伝達経路を同定したと発表しました。

大腸がんは従来、大腸の中にある少数の幹細胞に特定の遺伝子異常が蓄積することで発生するものと考えられていました。しかし、これまでの報告から、幹細胞以外の分化細胞や前駆細胞と呼ばれる細胞群が炎症などの刺激を受けることで、幹細胞のような働きを持つように変化することがわかってきました。しかし、幹細胞以外の細胞が幹細胞化した後に、実際の幹細胞と同じようにがんのもとになるのかは、わかっていませんでした。

特定の内分泌系前駆細胞を発見、Notch経路とYAP経路が重要

研究グループは「BHLHA15」という遺伝子を発現する特定の内分泌系前駆細胞を発見。この細胞が幹細胞と同じように“がんのもと”になりうること、また、その過程で「Notch経路」と「YAP経路」が、がん細胞化に重要であることを明らかにしました。

さらにマウスモデルを使って、BHLHA15を発現する細胞の活動を詳しく観察したところ、この細胞が「内分泌系前駆細胞」であることがわかりました。通常、この細胞は2週間程度しか生存せず、幹細胞から生み出される新しい細胞に置き換わります。しかし、ドキソルビシンという抗がん剤の一種で粘膜障害を引き起こすと、この細胞の中でNotch経路が活性化され、長期にわたって細胞分裂を繰り返す幹細胞のような働きを持つようになることが判明しました。また、Notch経路の活性化で、BHLHA15が別の前駆細胞である吸収系前駆細胞に変化し、大腸がんの発生に重要なApc遺伝子の変異を生じさせることで、BHLHA15が大腸・小腸でがんのもとになることがわかりました。その一方で、潰瘍性大腸炎患者さんにみられるような大腸炎症発がんの発生モデルでは、細胞中のYAP経路の活性化で、がん化することが明らかになりました。

今回の結果について、研究グループは「これまでわかっていなかった多様な大腸がんの発生メカニズムが明らかになるとともに、内分泌系前駆細胞やNotch・YAP経路を標的とした新規大腸がん治療の開発につながることが期待されます」と述べています。

(IBDプラス編集部)

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