ヒト生体に近い機能をもつ「腸管上皮細胞」が発売、経口薬開発の効率化に貢献

ニュース2019/9/18

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薬物吸収性の評価などを高精度に行える「創薬支援用細胞」

名古屋市立大学大学院薬学研究科 松永民秀教授(臨床薬学分野)と富士フイルム株式会社は、共同開発した、薬物の吸収性の評価に最適なヒトiPS細胞由来腸管上皮細胞「F-hiSIECTM」(以下F-hiSIEC)を発売することを発表し、同細胞は、富士フイルムより9月11日に発売されました。

F-hiSIECは、体を構成するさまざまな細胞に成長する能力を持つ「ヒトiPS細胞」を、小腸の腸管上皮細胞に変化させた「創薬を支援するための細胞」です。ヒトの体に近い機能をもち、薬物の吸収性を高精度に評価できる画期的な細胞であるため、経口薬開発の効率化に大きく貢献します。

医薬品の中でも広く使用されている経口薬は、排出されず体内に残った薬物と代謝物が血中に吸収され、全身を循環します。そのため、腸管上皮細胞の薬物吸収・代謝の評価は、有効性と安全性を予測するために重要な項目のひとつです。その評価は、正常なヒト生体由来腸管上皮細胞を使用して行うのが適していますが、同細胞を創薬研究用に安定して入手するのは極めて困難なため、一般的にはヒト結腸がん由来のCaco-2細胞が利用されています。しかし、Caco-2細胞は薬物代謝活性が低いため、薬物の吸収性を精度良く評価することは難しいという課題がありました。

ヒトiPS細胞由来なので、安定した性能で大量生産が可能

F-hiSIECは、薬を代謝する酵素の活性が正常なヒト生体由来腸管上皮細胞と同等で、さらに薬が細胞に出入りするために働く「トランスポーター」をつくる遺伝子の活性が、正常なヒト生体由来腸管上皮細胞と同等またはそれ以上であることが証明されています。つまり、Caco-2細胞の課題であった、低い薬物代謝活性が克服された細胞なのです。また、F-hiSIECはヒトiPS細胞由来なので、安定した性能で大量生産が可能です。そのため、いつでもヒト生体に近い機能をもつ細胞として利用でき、薬物の吸収性の評価などを、高精度に行うことができます。

最近では、このような産学連携の研究が数多く行われており、今回のF-hiSIECの開発もそのひとつです。近い将来、F-hiSIECがIBD治療の進歩に役立ってくれることを切に願います。

(IBDプラス編集部)

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