亜鉛欠乏で大腸炎が悪化することを発見、メカニズムも明らかに

ニュース2020/1/22

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特にクローン病患者で血中濃度が低いとされる「亜鉛」

石川県立大学生物資源環境学部食品生化学研究室准教授 東村泰希および京都府立医科大学大学院医学研究科医療フロンティア展開学(消化器内科学併任)髙木智久准教授、同・消化器内科学 内藤裕二准教授、同・伊藤義人教授らの研究グループは、亜鉛欠乏による大腸炎増悪メカニズムを解明したと発表しました。

腸管粘膜には、マクロファージや樹状細胞など多くの免疫細胞が存在しており、腸管における免疫応答や蠕動運動など、生理的機能の恒常性を維持するうえで重要な役割を果たしています。これらの免疫細胞の異常な活性化が、炎症性腸疾患(IBD)の発症要因のひとつと考えられています。

マクロファージは腸管粘膜のうち、固有層と呼ばれる部分に最も多く存在し、腸管の炎症に関係していると考えられています。マクロファージには大きく分けて、炎症を促進するタイプの「M1型」と、炎症を抑えるタイプの「M2型」があり、このM1型とM2型の数のバランスが、IBDの炎症の抑制に関係する可能性が示されています。

一方、生体の微量元素として知られる「亜鉛」は、免疫応答に深く関与していることがわかっていますが、腸管炎症とどのようにかかわるのかについては、まだ詳しくわかっていません。IBDの患者さん、特にクローン病患者さんでは、血中亜鉛濃度が健常者に比べて低いことが明らかにされていますが、血中の亜鉛濃度低下が病気にどのような影響を与えるのかに関しては不明点が多く、詳細は明らかになっていませんでした。研究グループは今回、亜鉛欠乏が腸管炎症に及ぼす影響について明らかにすることを目的とし、亜鉛欠乏マウスを用いた研究を行いました。

亜鉛を用いた新しいIBD治療の誕生に期待

その結果、亜鉛欠乏により、大腸炎が著しく増悪することを発見。その仕組みをについて調べてみると、大腸粘膜でM1型マクロファージが増加していること、炎症性の免疫細胞のひとつである17型ヘルパーT(Th17)細胞が活性化していることがわかりました。それに加え、Th17細胞が活性化する際に、M1型マクロファージから分泌されるインターロイキン-23(IL-23)という免疫物質が関与していることが明らかになりました。

今回の研究により、亜鉛の欠乏で腸管炎症の病態が進展するメカニズムの一部が解明されました。今後さらに研究が進み、亜鉛を用いた新しいIBD治療が誕生するかもしれません。

(IBDプラス編集部)

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