腸内微生物全体のゲノム解析で、病気の原因菌だけを狙って殺せる抗菌薬候補を発見

ニュース , 腸内細菌を学ぶ2020/7/16

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既存の抗生物質は善玉菌も殺してしまい、腸内細菌の乱れを助長

大阪市立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学の植松智教授らを中心とする国際共同研究グループは、腸内細菌ゲノムと腸内ウイルスゲノムを網羅的に解析することで、病気の原因となる腸内細菌の制御を可能とする新しい抗菌物質の同定に成功したと発表しました。

近年、ゲノム解析技術が進歩し、IBDなどの疾患と腸内細菌叢の乱れに関連があることがわかってきています。それだけでなく、疾患の発症と直接的に関わる病原常在腸内細菌が次々と発見され、疾患の発症予防のために除菌が期待されています。

しかし、既存の抗生物質の使用では、良い影響をもたらす菌も殺してしまい、腸内細菌の乱れを助長する可能性があるため、疾患原因となる腸内細菌だけを狙って排除するための方法が求められています。

研究グループは今回新たに腸内ウイルスゲノムの解析パイプラインを構築。その結果、これまで解析が難しかったウイルスゲノムの詳細分類が可能となり、日本人健常者の腸内ウイルス叢の全容が明らかとなったそうです。さらに、健常者の便から、腸内微生物全体のゲノムデータベース(腸内ウイルス叢と細菌叢のメタゲノムデータベース)が、世界に先駆けて作成されました。

このデータベースを用いた解析で、病気に関連する腸内常在菌の1種をピンポイントで制御可能な新しい抗菌物質が複数同定され、感染モデルマウスでこの抗菌物質の効果も証明されました。

IBDなど、腸内細菌叢の乱れに関連する難治性疾患の治療への応用に期待

今回の手法を、今後は疾患特異的な腸内細菌を標的として応用することで、これまで制御不能だった腸内細菌叢の乱れに関連するさまざまな難治性疾患に対する新たな治療アプローチとして使える可能性が期待されます。

研究が進み、将来的に「IBDの悪化を招く菌だけ殺傷する抗菌薬」が登場してくれたら、安心して使えそうですね。

(IBDプラス編集部)

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