妊活中。ヒュミラ使用中は生ワクチンを打てないと言われましたが風疹が心配です

医師と患者のお悩み相談2025/6/16

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症状(編集部注:クローン病の)が落ち着いてきたので、妊活を始めました。 風疹の抗体検査をして今結果待ちなのですが、もし抗体がない場合でもヒュミラを使用しているため、生ワクチンは打たない方が良いと主治医に言われました。ワクチンを打つにはヒュミラを4か月ほど打てなくなるため、その間に体調が悪化する可能性を考えると、母体の健康を優先した方がいいとのことでした。妊娠初期に風疹にかかると赤ちゃんに障害が出る可能性があると聞いて、防げるものに対処しないのは無責任になってしまうのか、自分の体調を第一にしても良いものなのか悩んでいます。先生のご意見を聞きたいです。また、今までに診られた患者さんで同じような経験をされた方がいたらどうされていたか教えていただきたいです。
(さきさん クローン病歴9年)

三枝先生

IBDに詳しい
三枝先生からの回答

ヒュミラに代表される、免疫を抑えるTNF-α製剤、ステロイド製剤を使用中は、生ワクチンは打てません。なぜなら、生ワクチンは感染症を弱毒化(ウィルスの成分を薄めたもの)したものだからです。通常の免疫を持つ方には投与しても感染はしませんが、免疫抑制治療、生物学的製剤、抗がん剤、ステロイド投与中、白血病など免疫力が低下する病気の方に生ワクチンを投与すると、感染症になってしまう可能性があるため投与できません。

確かに私の経験上、クローン病がゆっくりと発症した場合で生ワクチンを投与した場合は、生ワクチンを投与打ってから、ステロイド、ヒュミラを投与した方が良いと思います。しかし、多くのクローン病、潰瘍性大腸炎は突然、急激に悪化することがあります。私は初診時に生ワクチンを測定しますが、抗体がなくても患者さんの病状を優先にステロイド、生物学的製剤を投与します。よって、さきさんの主治医の先生とほぼ同様の意見となります。

確固たるガイドラインがあるわけではありませんが、私は生ワクチンの抗体がない方に対しては、ある程度安定していたらエンタイビオやカログラなどで腸管免疫のみをコントールし、全身免疫を抑制しない生物学的製剤から開始します。また、ヒュミラからエンタイビオに変更します。そこで病状が安定していたら、生ワクチンが投与可能となりますので、その時に抗体がない生ワクチンを投与していきます。また、エンタイビオは妊娠初期まで投与可能です。

多くの場合は風疹への感染に気をつけてもらって、クローン病の治療優先・母体優先となります。しかし、さきさんが心配されている通り、風疹に感染するリスクはゼロにはなりません。風疹に感染すると体調を崩し、赤ちゃんに難聴や視力障害など、「先天性風疹症候群」が出る可能性があります。まだ年齢的にも妊活に余裕があるのであれば、ヒュミラをエンタイビオ、カログラへの変更した上で、生ワクチンの投与を相談されてみてはいかがでしょうか。

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三枝陽一先生
深川ギャザリアクリニック 副院長
三枝陽一先生
2001年 北里大学医学部卒業。北里大学病院 内科研修医
2003年 大和市立病院出向 内科後期研修医
2004年 北里大学東病院 消化器内科後期研修医、北里大学院入学
2008年 北里大学院卒業、学位取得。相模野病院出向
2018年 相模野病院 消化器センター部長
2018年 相模原保健所 疾病対策課
2025年 深川ギャザリアクリニック 副院長

<学会資格>
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
難病指定医

三枝先生のIBD診療時間
月曜日:9:00~12:30
水曜日:9:00~12:30、14:00~18:00
土曜日:16:00~18:00
お問い合わせ:03-5653-3500(代表)

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