【JSIBD市民公開講座】潰瘍性大腸炎に対する治療(札幌厚生病院 IBDセンター 本谷 聡先生)

ニュース2022/1/19

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適切な治療を受けることで、普段と変わらない生活が送れるようになりつつある潰瘍性大腸炎。そのためには、患者さんご自身が治療について学び、正しく理解することが大切です。講演では札幌厚生病院 IBDセンターの本谷 聡先生が、専門的で難しくなってしまいがちな治療の作用機序や期待できる効果について、症例なども紹介しながら、わかりやすく解説してくださいました。

メサラジン製剤に「大腸がん抑制」効果?

本谷先生は最初に、潰瘍性大腸炎の基本的な治療薬「メサラジン製剤(ペンタサ、アサコール、リアルダ)」について、腸の炎症止めと説明したうえで、いずれも有効成分が同じである一方、大腸粘膜まで十分量のメサラジンを届けるための工夫が各製剤で異なること、また、坐剤や注腸剤など、さまざまなタイプの剤形があるので個人に合ったものを選ぶことが大切であることを、ポイントとして挙げました。

アサコールを正しく服用していたのに具合が悪くなってしまったという、本谷先生の患者さん(左側結腸炎型)の症例では、結果的にリアルダに変更して用量を増やすことで粘膜治癒に至ったそうです。本谷先生は、「かつてはメサラジン製剤で改善が見られなかった場合はステロイドを使用することが一般的だったが、最近ではメサラジン製剤を十分量使うことで、粘膜治癒を達成できる患者さんが増えてきた」と、述べました。

また、IBDプラスでも関連記事を複数掲載している「メサラジン製剤を長期的に飲むことの重要性」について、腸の良い状態を維持する効果に加え、「大腸がんの発生抑制効果」についても言及。例として、ペンタサを正しく服用していなかった50代と30代の患者さんの、大腸がんを合併した内視鏡画像も示されました。幸い、早期発見で一命は取り留めたそうですが、潰瘍性大腸炎で起こる大腸がんは発見されにくく、また、早期がんだと思っても、実際には非常に進行しているケースがあると、十分な注意を促しました。

一方で、メサラジン製剤でアレルギーが出てしまう「メサラジン不耐」の患者さんも一定数いるので、いつまで経っても症状が改善しない、むしろ悪化しているというような場合は、検査などで見極めが必要なケースがあると述べました。

身近な治療薬のメリット・デメリットを徹底解説

ステロイド依存性の潰瘍性大腸炎に使用される「チオプリン製剤(免疫調節薬)」は、脱毛や白血球の減少などの強い副作用が出る可能性がありますが、事前に「NUDT15遺伝子多型検査」を受けることで、副作用のリスクを調べることができるようになりました。また、コロナ禍でCAP(血球成分除去)療法が、副作用が少なく安全性が高いということで見直されつつあるそうです。

抗TNFα抗体製剤に関しては、「クローン病に比べると有効性は低く、長期の寛解維持効果も不安定」と前置きした上で、レミケードは活動性の高い人に、ヒュミラは活動性がやや穏やかで外来治療が可能な人、シンポニーはその中間と、使い分けしていると述べました。これらに加えて、新たな作用機序の生物学的製剤として、エンタイビオとステラーラが登場しました。エンタイビオは腸管にのみ作用するので、安全性が高く、高齢者や抗TNFα抗体製剤で副作用が心配される人やメサラジンやチオプリン不耐の人にも使えるそうです。一方、あまりに活動性が高い潰瘍性大腸炎では寛解導入ができないことがあるので、活動性を考慮して治療選択することが必要だと、注意点を述べました。一方、ステラーラは、多くの薬剤に治療抵抗性でも有効性が高く、長期間の寛解維持効果が期待されており、維持投与間隔が長く利便性が高いというメリットがある点を特徴として挙げました。

飲み薬のJAK阻害薬「ゼルヤンツ」については、利便性が高い反面、血栓のリスクがあるので、高齢者や喫煙者など一部の患者さんは安全性を考慮して使用を検討する必要があるとしました。

医師と相談し、粘膜治癒を長期間維持できるような治療を選択・継続することが重要

最後に本谷先生は、潰瘍性大腸炎の内科治療では、寛解導入だけではなく「維持療法」も同じくらい重要であると述べ、「主治医とよく相談して粘膜治癒を長期間維持できるような治療を選択し、継続していくことが必要だ」と、力強く語りました。

(IBDプラス編集部)

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