IBD患者さんの新型コロナ重症化因子は「肥満」と「脳血管疾患既往歴」、最終解析で判明

ニュース2023/9/29 更新

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IBD患者さんは新型コロナにかかりやすく、重症化しやすいのか?

札幌医科大学医学部 消化器内科学講座の仲瀬裕志教授を代表とする研究グループ(日本人炎症性腸疾患患者におけるCOVID-19感染者の多施設共同レジストリ研究グループ:J-COSMOS group)は、炎症性腸疾患(IBD)患者さんの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化因子を解明したと発表しました。

IBD患者さんは免疫を抑える治療薬を常用することが多いため、新型コロナウイルス感染症に罹患しやすい可能性や、重症化しやすい可能性が危惧されていました。

同研究は、日本人のIBD患者さんが新型コロナウイルス感染症を発症した際の臨床的特徴を把握し、今後の診断や治療介入に生かすために計画されたもので、2020年6月~2022年12月までにレジストリ(患者さんの疾患・健康状態・治療内容・治療経過などの情報を管理するデータベース)に登録された患者さんを対象に実施されました。

新型コロナウイルス感染症になった日本人のIBD患者さん1,308人を対象に解析

参加登録された医療機関に通院中または入院したIBD患者さんで、かつ新型コロナウイルス感染症に罹患した人を対象に、IBDの活動性・IBDの治療薬・COVID-19の重症度などを調査しました。

前回の中間解析(2021年10月31日)から最終解析(2022年12月31日)までに登録された患者さんは1,121人増加し(6.1倍)、最終的に1,308人の解析が実施されました。同時期の日本人のCOVID-19発症件数は14.4倍に増加していることから、IBD患者さんが自身の免疫が弱いことを自覚し、感染予防を徹底していることへの表れと考えられました。

新型コロナウイルス感染症の重症化は1.6%、発症後のIBD悪化も少ないと判明

登録した患者さんのうち、新型コロナウイルス感染症が重症化したのは1.6%で(WHO重症度分類)、残りの98.4%は非重症型でした(厚生労働省の定義する重症度分類における中等症Ⅱと重症は、どちらもWHO重症度分類の重症に相当)。登録した患者さんでは新型コロナウイルス感染症で死亡した人もいませんでした。

また、新型コロナの発症によって「IBDの病状が悪化することは少ない」「一時的にIBDが悪化しても、治癒後に元のIBDの病状まで改善することが多い」ことが判明しました。

重症化因子は肥満と脳血管疾患既往歴、免疫抑制治療薬による重症化リスクは少ない

統計学的解析により、IBD患者さんにおける独立した新型コロナウイルス感染症の重症化因子は「高BMI(肥満)」と「脳血管疾患の既往歴がある」ということだとわかりました。

一方で、IBDに対する「抗TNFα抗体」または「チオプリン」の使用は、重症化リスクが少ないことがわかりました。

中間解析で重症化リスク候補だった「ステロイド」、最終的には有意差なし

今回の研究により、肥満と脳血管疾患の既往歴が新型コロナウイルス感染症を悪化させるリスクであることが明らかになりました。また、中間解析では統計学的に新型コロナの重症化リスクと考えられていたステロイド投与は、最終解析では有意差を示さなかったとしています。一方、ステロイド以外のIBDにおける免疫抑制治療薬(チオプリン製剤、抗TNF-α抗体製剤)は、むしろ新型コロナウイルス感染症を重症化させるリスクが少ないことが判明しました。

「COVID-19に関する社会的な制限は緩和されたが、COVID-19の流行や新たな変異ウイルスの発生といったCOVID-19に関する医学的・公衆衛生的な問題はいまだ続いている。Withコロナ、Postコロナ時代におけるIBD診療(検査や治療)のあり方について、当講座ではさらなる研究を続けている」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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