炎症性腸疾患の疾患活動性の迅速評価を可能にする血清バイオマーカー「LRG」を実用化
ニュース | 2018/9/13
強く求められていた疾患活動性マーカーの開発
医薬基盤・健康・栄養研究所は9月10日、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)が潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)など炎症性腸疾患(IBD)の疾患活動性マーカーとなることを発見したと発表しました。この研究成果は、同研究所免疫シグナルプロジェクト仲哲治招へいプロジェクトリーダー(高知大学医学部免疫難病センター教授)、慶應義塾大学医学部(金井隆典 消化器内科学教授)、大阪大学大学院医学系研究科(竹原徹郎 消化器内科学教授)、東京医科歯科大学消化器内科(渡辺守 消化器内科教授)ら研究グループによるものです。
現在、炎症性腸疾患の活動性の評価として大腸内視鏡検査が実施されています。大腸内視鏡検査は、炎症性腸疾患の病態を正確に評価することができますが、侵襲性が高く、疾患の増悪リスクがあることなどから頻回に施行することが困難です。そのため実臨床では、白血球数や赤血球沈降速度(ESR)、C反応性蛋白(CRP)等の採血データと、臨床症状を元にした臨床活動性指数を組み合わせ、総合的に活動性を評価しています。
しかし、採血データは必ずしも正確に粘膜病変を反映しないことが知られています。また、臨床活動性指数は便の回数や性状、患者さんの自覚症状や医師からみた重症度を元に算出され、客観性に乏しく内視鏡所見との乖離が大きいという問題もあります。こうした背景から、患者さんの病態を正確かつ簡便に把握するための有用なバイオマーカーの開発が強く求められていました。
積水メディカルが「ナノピアLRG」として承認を取得
研究グループと積水メディカル株式会社は、LRGの迅速な定量法を開発し、これを実用化するために共同で、「炎症性腸疾患の疾患活動性評価の血清バイオマーカー」の開発に着手。臨床試験の結果、炎症性腸疾患の疾患活動性を評価する上で、血清LRGが有用であることを確認。2016年3月31日に厚生労働省に体外診断用医薬品として製造販売承認申請を行っていました。そして今回、2018年8月21日付で、製造販売承認取得に至ったとのことです。
今回、開発された炎症性腸疾患の疾患活動性を迅速に測定する方法は、患者さんから採取した少量の血液を用いて、血清中のLRGの濃度を、ラテックス免疫比濁法とよばれる測定方法により数分で測定するもの。この測定は、検査施設を持つ病院であれば実施可能で、その日の診察の間に結果を得る事ができるといいます。また、血液中のLRG濃度は、従来の血液マーカーよりも、内視鏡検査による疾患活動性評価と非常に強く相関するため、治療に伴う疾患活動性の変化を簡便・適切に評価でき、不要な内視鏡検査の回避、治療薬の増減や変更を判断することが容易になるそうです。
血清LRGの測定方法が承認されたことで、血液検査による炎症性腸疾患の迅速な活動性評価が可能になります。さらに今後、炎症性腸疾患以外にも、バイオ製剤使用時の関節リウマチなどさまざまな炎症性疾患への応用も視野に入れて、共同研究開発を進めていくとしています。
なお、積水メディカルからは、「ナノピア(R)LRG」の体外診断用医薬品製造販売承認を取得したとのニュースリリースも同日付で発表されています。今後、同社はナノピアの保険適用申請を予定しているとのことです。
(IBDプラス編集部)
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