潰瘍性大腸炎の新たな病態メカニズム解明、炎症部位で増加している細胞を特定
ニュース | 2020/8/13 更新
潰瘍性大腸炎に関与するとされる「CD4 T細胞」の異常と「CD8 T細胞」の組織障害
順天堂大学大学院医学研究科 免疫病・がん先端治療学講座の波多野良特任助教、森本幾夫特任教授、消化器内科学講座の石川大准教授らの研究グループは、潰瘍性大腸炎の新たな病態メカニズムを解明したと発表しました。
潰瘍性大腸炎には、大腸の粘膜層に存在する「免疫CD4 T細胞」の異常と、「免疫CD8 T細胞」による組織障害が関与していると考えられていますが、どのような免疫反応がどのように炎症反応に関わっているのかは不明でした。
そこで研究グループは潰瘍性大腸炎の病態メカニズムを明らかにする目的で、英国オックスフォード大学の研究グループとともに、オックスフォード大学病院で内視鏡検査を受けた潰瘍性大腸炎患者さんと健康な人の大腸生検組織を用いて解析を実施しました。
潰瘍性大腸炎の炎症に「IL-26」が大きく関わっている可能性
腸管はこれまで、食物由来の外来抗原やアレルギー起因物質、病原性微生物などに常にさらされている場所であり、全身の免疫系とは異なる特殊な免疫細胞によって、独自の生体防御システムを備えていることが知られています。今回の解析で新たに、大腸に局在するCD8 T細胞が、細かくみると14もの、それぞれ異なる特徴をもつ細胞集団を形成していることが明らかになりました。
さらに、潰瘍性大腸炎患者さんと健康な人を比較したところ、潰瘍性大腸炎では大腸に常在するメモリーCD8 T細胞の割合が著しく減少していた一方、免疫細胞が産生する炎症関連因子「インターロイキン-26(IL-26)」を産生するCD8 T細胞と、細胞を傷害する活性をもつCD8 T細胞の割合が大きく増加していることを発見しました。この発見により、「潰瘍性大腸炎の炎症にIL-26が大きく関わっている可能性」が、初めてわかりました。
IL-26をターゲットとする治療法の開発に期待
現在、研究グループは、潰瘍性大腸炎のマウスモデルを使って、大腸炎の発症・悪化にIL-26産生CD8 T細胞がどのように関わっているのか、病態メカニズムの解析を進めているそうです。
今回発見されたIL-26産生CD8 T細胞の炎症における役割が明らかになることで、炎症性腸疾患(IBD)が発症・悪化するメカニズムのさらなる解明につながることが期待されます。研究グループは、このIL-26の作用を抑制できるヒト化抗体の作製を進めており、新たな治療法の臨床応用を目指していくとしています。
潰瘍性大腸炎患者の炎症を引き起こすIL-26が悪さをしている可能性があるという今回の発見。IL-26を抑える新たな治療の登場にも期待したいですが、IL-26が大量に作られる理由を突き止める必要がありそうですね。続報に期待です!
(IBDプラス編集部)
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