IBDの粘膜治癒・組織学的治癒に一歩前進!新規治療法の手がかりを発見

ニュース2021/7/8

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腸粘膜の正常化に直接効果のあるIBD治療薬はまだない

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科消化器病態学分野の土屋輝一郎非常勤講師(筑波大学医学医療系教授)らの研究グループは、炎症性腸疾患(IBD)の粘膜治癒、組織学的治癒を目標とした、新しい治療法の実用化が期待できる発見をしたと発表しました。

IBDで寛解維持するためには炎症を鎮めるだけでなく、粘膜の潰瘍を治癒させる必要があります。しかし炎症を抑えて潰瘍が治癒しても、粘膜自体の異常は残ると言われ、再燃の危険性があります。そのため最近では、粘膜の構造を正常化させる「組織学的治癒」が治療目標とされていますが、腸粘膜細胞の再生や正常化に直接効果のある治療薬は、いまだ開発されていません。

ヒトの体をつくる設計図に相当する遺伝子は、DNAという物質で構成されています。DNAは、ヒトの細胞では 46 本の染色体という形で存在しています。この染色体の末端を「テロメア」と言い、末端部分の長さを「テロメア長」と呼びます。テロメア長は細胞分裂のたびに少しずつ短くなり、ある程度まで短くなると細胞分裂を停止することから、寿命に関与すると考えられています。

難治性潰瘍の修復や長期寛解維持など、5年後を目処に実用化を目指す

今回、研究グループは潰瘍性大腸炎モデルで、「潰瘍性大腸炎の慢性炎症の経過で、上皮細胞のテロメアが短くなる」ということを発見しました。これにより、「テロメアが短くなることで、大腸粘膜の再生不良や組織学的異常が引き起こされる」と考えられました。

実際に、IBD大腸モデル(IBD様大腸オルガノイド)にテロメアを長くする薬剤(テロメア伸長剤)を投与したところ、炎症を抑制するだけでは改善しない、ヒト大腸粘膜の組織異常が正常化したということです。

今回の研究成果により、テロメア伸長剤には既存治療薬にはない、上皮細胞を正常化させるはたらきと粘膜再生効果があることが明らかになりました。

「テロメア伸長剤は、難治性潰瘍の修復や長期寛解維持など、IBDに対する予後の改善が見込まれるため、5年後を目処とした実用化を目指す」と、研究グループは述べています。

(IBDプラス編集部)

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