新型コロナ重症患者の腸で起きている免疫異常を解明
ニュース | 2022/8/30
「消化管障害」の観点からCOVID-19の重症化メカニズムを調査
札幌医科大学医学部消化器内科学講座の横山佳浩研修医と仲瀬裕志教授の研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者さんの消化管における「トリプトファン代謝障害」を明らかにしたと発表しました。
COVID-19重症化のメカニズムはいまだ不明ですが、下痢、悪心・嘔吐、食欲不振、腹痛などの消化器症状の出る人がいることが知られています。
一方、トリプトファンは、ヒトの体内で十分量合成ができない必須アミノ酸の一つです。消化管では腸内細菌と相互作用し、腸内環境を整える働きをしています。
重症COVID-19患者さんは腸管炎症マーカーの値が高く、トリプトファンの代謝産物が減少
研究グループは今回、COVID-19の重症化メカニズムを「消化管障害」の観点から明らかにすべく、2020年6~11月までに同大附属病院で入院治療を行ったCOVID-19患者さんを対象に研究を行いました。
患者さんの血液サンプル、便サンプル、内視鏡検査の際に採取した腸管組織を用いて、COVID-19重症化因子を特定するため、血清中の炎症性サイトカインや、便中カルプロテクチンなどを調べ、「重症化したグループ」と「重症化しなかったグループ」を比較検討しました。
その結果、血液では「インターロイキン-6」が重症例の炎症マーカーであることが判明。また、重症患者さんでは腸管の炎症マーカー「便中カルプロテクチン」の値が高いこともわかりました。便中の代謝物質解析では、ヒトの健康維持に重要なトリプトファンの代謝産物である「インドール-3-プロピオン酸」の著明な減少がみられたということです。さらに、重症COVID-19患者の腸管組織を解析した結果、重症COVID-19において「腸管内トリプトファン代謝障害」が生じることが示唆されました。
「新型コロナ感染とIBD」のさらなる関係解明にも期待
研究グループは、「今回のデータが、COVID-19重症化メカニズムのさらなる解明や治療・予防法への応用に貢献することが期待される」と、述べています。
同研究グループの1人である仲瀬先生は、「JAPAN IBD COVID-19 Taskforce」のリーダーでもあります。今後さらに、新型コロナ感染におけるIBDの影響も明らかにされていくことに期待したいですね。
(IBDプラス編集部)
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