炎症性大腸がんの発生を抑える、新しいメカニズムを解明
ニュース | 2019/10/1
長年問題視されているIBDからのがん化
東北大学大学院医学系研究科および大学院医工学研究科病態液性制御学分野の阿部高明教授、大学院消化器外科学分野の大沼忍講師、海野倫明教授らの研究グループは、炎症性大腸がんの発生を抑える新しいメカニズムを解明したと発表しました。
炎症性腸疾患(IBD)は、慢性炎症が長期化すると腸炎関連大腸がんになることがあり、問題視されていました。そこで研究グループは、炎症性大腸がんマウスを用いて、阿部教授と岡山理科大学の林謙一郎教授らの研究グループが共同開発した新規薬剤「Mitochonic acid35(MA-35)」が腫瘍の形成を抑えるのか、また、組織の線維化を防ぐ作用があるのかについて調べました。
MA-35が大腸の炎症と繊維化を抑制
炎症性大腸がんマウスに薬剤MA-35を70日間経口投与したところ、下痢や下血などの炎症症状や貧血症状が改善し、生存率も改善しました。また、炎症性大腸がんマウスでは、腫瘍が形成されたために腸管の長さが短くなってしまいますが、同剤を投与すると、腸管長の短縮が抑制され、大腸がんの発生も減少しました。また、腸管粘膜の炎症や線維化も抑えられていたそうです。
さらに、炎症性大腸がんマウスにMA-35を投与した後で大腸組織を調べた結果、がんになる前段階の部分(異形成部)で、炎症と線維化に関連する遺伝子の発現量が低下しているとわかりました。また、ヒト大腸がんの培養細胞を使って、炎症および線維化に関わる細胞内情報伝達経路を解析したところ、同剤は、どちらの経路も途中段階でストップさせることで、結果として大腸の炎症と線維化を抑えていることが明らかとなりました。
今回の研究成果により、MA-35が、がんの原因となる大腸の炎症と線維化を抑えることで、大腸がんの発症を抑えることが示されました。将来的に、MA-35がIBDやIBDを原因とする炎症性発がんに対する新規治療薬になる可能性があります。
(IBDプラス編集部)
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