慢性的なIFN刺激で大腸幹細胞が減少する仕組みを発見、IBDの原因解明に一歩前進
ニュース | 2020/9/16
「常に微量な」IFN刺激は、感染への備えとして欠かせない仕組み
東京医科歯科大学・難治疾患研究所生体防御学分野の樗木俊聡教授らの研究グループは、理化学研究所生命医科学センター粘膜システム研究チームの大野博司チームリーダーらとの共同研究で、慢性的なインターフェロン刺激が大腸幹細胞の枯渇や機能低下の原因になる仕組みを発見したことを発表しました。
I型インターフェロン(以下、IFN)とは、ウイルスや細菌感染の際に、身体に抵抗性を付与する重要なサイトカイン(免疫物質)です。IFNは、感染を起こしていないときも、常に微量産生されており、この「微量なIFNの刺激」が、いざ感染が起こったときに効率よく免疫応答を発動するために重要です。
「微量」でないとIBDにも関係する大腸幹細胞が減少、その仕組みを解明
ここで大事なのは「微量」であるところで、IFNでの治療を受けたり、何らかの原因で量の調節がうまくいかなかったりして、常にIFNが多めに産生されてしまうと、腸の上皮が弱くなってしまうことがわかっています。IBDプラスのニュースでも取り上げましたが、研究グループは7月に、IRF2というタンパク質がIFN刺激を適度に調節することで大腸幹細胞の数や機能を維持していることを報告していました。
大腸幹細胞は大腸上皮の正常な状態の維持と、障害を受けた大腸上皮の再生に不可欠で、大腸幹細胞の機能不全は炎症性腸疾患(IBD)を引き起こす原因となります。しかし、大腸幹細胞が機能不全となる原因は不明でした。今回の発表は、前回の続きの研究で、慢性的なIFN刺激で大腸幹細胞の数が減ったり、はたらきが落ちたりする「仕組み」が解明されました。
今回の発見がIBDの発症原因解明につながる可能性
今回、研究グループの解析により、「慢性的なIFN刺激」が大腸幹細胞の自己複製能を低下させると同時に、TA細胞という別の細胞に変化してしまうことが判明。その結果として、大腸幹細胞の数が減少してしまうことが明らかになりました。
今回の研究成果は、生涯にわたり機能的な大腸幹細胞を維持するためのヒントとなるものであり、IBDの発症原因解明に貢献するものです。
IBDの原因解明に、また一歩前進ですね。果たして、TA細胞がIBDに関係するのか?さらなる解析に期待したいと思います。
(IBDプラス編集部)
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