活動期・再燃期の安心ごはん
活動期・再燃期でも安心して食べられる栄養士監修のレシピをご紹介。
どれもお腹に優しいのはもちろん、「美味しさ」にもこだわりました。具合が悪いときにこそ、お気に入りの一品を見つけてみませんか?
食事 | 2019/3/12 更新
クローン病は、口腔から大腸までの消化管、特に小腸・大腸の腸管に非連続性(飛び石状)の炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気です。病変が集中している範囲によって、「小腸型」「小腸・大腸型」「大腸型」「胃・十二指腸型」の4つに分類されます。代表的な症状として、慢性的な腹痛や下痢、発熱、体重減少などがあります。
発症の原因はまだよくわかっていませんが、食事に含まれる脂質などが悪化の原因と考えられています。また、腸内の食べ物や細菌が関係するともいわれています。支障なく日常生活を送るためにも、食事の基本をしっかりと知り、守っていくことが大切です。
クローン病ではタンパク質を消化する能力が低下し、タンパク質が十分に消化されないまま腸管から吸収されてしまいます。体内に入った消化されていないタンパク質は、異物と間違えられて免疫の攻撃対象となり、腸に炎症が起こるのではないかと考えられています。成分栄養剤は、ほとんどの栄養素が消化された状態になっていますので、消化管に負担をかけることなく、腸を穏やかな状態を保つことができます。
小腸に病変がある人は、寛解期でも、成分栄養剤や消化態栄養剤などを用いた栄養療法を続けます。成分栄養剤を900~1,200kcal(1日)摂取すると、再燃を抑えられるといわれています。
クローン病は、症状の個人差が大きな病気です。食事についても、何をどれだけ食べられるかの個人差が大きいので、少しずつ試しながら自分に合う食品・合わない食品を把握していくようにしましょう。自分が食べたものを記録しておくと、自分に合う食品・合わない食品を把握するのに役立ちます。食べると下痢や腹痛、腹部膨満などが起こるものは、「自分に合わない食品」かもしれませんので、食べるのを控え、医師に相談するようにしましょう。なお、クローン病の症状悪化の原因とされている脂質は、1日30g以下を心がけるようにしましょう。
消化器官への負担となる脂肪や残渣(ざんさ=食物繊維)、刺激物を避けることを意識し、カロリーは高めを心掛けましょう。「高カロリー・低脂肪・低残渣・低刺激」が、クローン病の食事のポイントです。1日に必要なエネルギー量は、「理想体重(標準体重)1kgあたり約40kcal」とされていますが、デスクワークなどで日中あまり動かない人や炎症がないときは、「1kgあたり約35kcal」でもよいとされています。特に子どもの場合は、炎症が原因でエネルギーの吸収が十分でなく、成長に影響が出ることもあるので、カロリーは高めのほうがよいとされています。
理想体重(kg)=(身長m)2×22
1日に必要なエネルギー量(kcal)=理想体重(kg)×40
身長170cmの場合
理想体重=(1.7m)2×22=63.6(kg)
1日に必要なエネルギー量=63.6(kg)×40=2,544(kcal)
再燃してしまった場合は、医師の指示に従って食事の量を減らし、成分栄養剤を増やします。入院中は流動食や成分栄養剤、症状がよくなってきたら、お粥やスープなどを摂ります。症状が重い場合には絶食になることもあります。
退院してすぐは、炎症がまだ治まっていないこともあります。脂質が少なく、消化がよいお粥などから始めましょう。
必要なエネルギーを確保するためにも、主食をしっかり食べましょう。特に米は消化がよく、多く含まれるでんぷんは、小腸や大腸で病変の治りを早くする作用が期待できるともいわれています。
パンは、フランスパンや食パンなど脂質が少なく、比較的安心して食べられるパンがある一方で、デニッシュやメロンパンなど脂質が多いパンもあるので、あらかじめ確認するようにしましょう。また、パン酵母でアレルギーを起こす人もいるので、腹痛や下痢、普段より便の回数が増えるなど、いつもと異なる症状が出る人は注意が必要です。
おすすめの食材
主食 | お肉 | |||
---|---|---|---|---|
魚 | 鶏 | 豚・牛 | ||
通常時 | ごはん おかゆ うどん など |
白身魚 赤身 |
ささ身 胸肉(皮なし) |
|
調子の いいとき |
フランスパン 食パン パスタ など |
青魚 うなぎ |
もも肉(皮なし) | 赤身(もも肉・ヒレ肉) 豚レバー |
※自分の身体と主治医によく相談を!
「低脂肪」の食事を心がけることは、クローン病の状態を少しでもよく保つためにとても大切です。実際に、クローン病の再燃と脂質の摂取との関連を調べた研究で、脂質の摂取量が増えれば増えるほど、再燃率も高くなることが報告されています。脂質の量は、1日30g以下を意識しましょう。日本人(成人)の平均摂取量は60gといわれていますので、「通常の半分」をイメージして摂るようにしましょう。
お肉なら牛のバラ肉やロース肉、魚であれば、ウナギやブリ、サバ、サンマなどが挙げられます。乳製品では生クリームやバター、クリームチーズが高脂肪です。マヨネーズやドレッシングなど、調味料にも油がたくさん使われていますので、注意が必要です。インスタントラーメンなどの加工食品やスナック菓子も、食べるのを控えましょう。
油のなかでも「n-3系」の油は炎症を抑える作用があるとされているので、積極的に摂取しましょう。n-3系の油を含む代表的な食材は、しそ油、えごま油、ハマチ、マイワシ、ホンマグロ、ブリ、サンマなどがあります。一方、摂取を控えたほうがよいのが「n-6系」の油です。n-6系の油は、紅花油、大豆油、ひまわり油のほか、豚肉などの動物性の脂に多く含まれています。n-6系の油を減らし、n-3系の油の割合を増やしましょう。目安としては、摂取する油の20%をn-3系に、80%をn-6系にとどめるとよいでしょう。
油の種類と摂取割合の目標 | |
---|---|
20% | 80% |
n-3系を含む油 | n-6系を含む油 |
えごま油 しそ油 マイワシ サンマ ホンマグロ ハマチ ブリ |
紅花油 大豆油 ひまわり油 お肉の脂 |
クローン病の人には、乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素が少ない「乳糖不耐症」の人が多くいるといわれています。乳糖不耐症の人は、乳糖を摂取すると下痢や腹痛、腹部膨満感などを引き起こします。まずは少量から試し、症状が出ないことを確認しましょう。また、乳製品には脂質が多く含まれるので、摂取する量にも注意が必要です。
「低残渣」もクローン病の食事の基本ですが、症状が安定し、腸管に狭窄がなければ、食物繊維を厳しく制限する必要はありません。食物繊維のなかでも「水溶性の食物繊維」は、適量であれば食べても問題ありません。水溶性食物繊維には、りんごやバナナ、桃などに含まれるペクチン、海藻のぬめりの部分に含まれるアルギン酸ナトリウム、ごはんなどの糖質に含まれるオリゴ糖などがあります。水様便や排便回数が多いときなどに水溶性食物繊維を摂ると、便がまとまった形になり、下痢を防ぐことができます。さらに近年の研究では、食物繊維が腸内環境を整え、炎症で傷ついた腸管の粘膜を修復したり、便を健康な状態にしたりするなど、腸に対してよい働きがあることもわかってきています。
クローン病の人は、食事からタンパク質を多く摂取することは控え、主食などでエネルギーを補給するようにしましょう。タンパク質を含む食材には脂質も多く含まれていますので、タンパク質を控えることが脂質の減量にも繋がります。
摂取する場合は、魚介類や植物性のタンパク質がおすすめです。魚を食べる際にも、ウナギや青魚よりも、タラやカレイなどの白身魚や、マグロの赤身のような脂の少ない魚を選ぶのがポイントです。お肉を食べたいときには、鶏のささ身や胸肉を選びましょう。鶏肉の皮は脂が多いので、取り除くのを忘れずに。寛解期で体調がよいときは、牛の赤身肉(もも肉やヒレ肉)、鶏もも肉(皮なし)も食べられます。ロース肉やバラ肉、ひき肉や、ハム、ベーコンなどの加工肉は、脂質が多いため避けるようにしましょう。また、クローン病では豚肉を食べると再燃しやすいことがわかっています。
排便回数が多いとき、体調不良で熱が出たときなどに、下痢を心配して水分を控える人がいますが、過度な我慢は脱水症状につながり、場合によっては生命にも関わります。のどの渇きを感じる前に、こまめな水分補給をするようにし、腸を刺激する熱すぎる・冷たすぎる飲み物は控えるようにしましょう。
体調が悪く食事量が減ると、塩分摂取量も減りがちです。また、下痢を繰り返したり発熱したりしたときなど、水分の排泄が多いときに塩分が不足すると、脱水症状が起こりやすくなります。塩分については1日10~12g程度までであれば、気にする必要はありませんので、きちんと摂るようにしましょう。
クローン病の人は、食事の制限や吸収不良のために、栄養素が不足しがちです。また、腸管の病変の位置によっても、栄養素の吸収が悪くなります。特に脂溶性ビタミンのビタミンA、ビタミンD、ビタミンKは脂質と一緒に体内に吸収されるため、脂質の吸収障害があったり、脂質を厳しく控えていたりすると不足することがあります。特にビタミンDは、カルシウムの吸収を促す働きがありますが、ステロイドを長期間服用している場合にはカルシウムの吸収障害が起こるため、ビタミンDを意識して摂取するとよいでしょう。ビタミンDは、イワシやブリ、サバなどの青魚、マグロやカツオなどにも含まれます。
一般的に外食のメニューは、肉や乳製品など高脂肪の食品を使ったものや、油を多く使ったものが多いので、体調が悪いときには外食を控え、体調がいいときでも1日1回までを目安にするのがよいでしょう。
お店選びのコツは、メニューに栄養成分表示があるお店を選ぶことです。また、マヨネーズやドレッシングを使わないようにしたり、ノンオイルのものを選ぶだけでも、脂質を減らすことができます。食べるときには、お肉の脂身や揚げ物の衣を残すようにすることで、さらに脂質を減らせます。最近では健康ブームの流れもあり、「油を減らしたメニュー」や「量の少ないメニュー」を別に設けているお店も増えてきたので、選択肢の幅も広がったといえます。それらのお店の中から、比較的安心して食べられるうどんや焼き鳥、人によってはお寿司、和食の定食、パスタなど、自分に合うメニューのあるお店を選ぶのがよいのではないでしょうか。万が一食べ過ぎてしまった場合には、そのあとの食事を低脂肪の献立にするなど調整しながら、無理なく外食を楽しみましょう。
コンビニやスーパーの加工食品には、PH調整剤や保存料、化学調味料などの添加物が添加されていることが多くありますので、利用する頻度は、できるだけ少なくしましょう。利用するときには、栄養成分表示や原材料を必ずチェックし、脂質の量や自分に合わない食品が含まれていないかを確認することを習慣づけましょう。
サンドイッチはパンが食べられる人にとって強い味方ですが、挟んである具材が低脂肪でも、パンに塗られているマーガリンは脂質が多いですし、からしやマスタードなどの刺激物が塗ってあることもあるので、十分な注意が必要です。比較的安心して食べられるのは、おにぎり、うどん・そばなどの麺類、揚げ物がメインではない和風のお弁当です。コンビニのおにぎりは、温めてから食べると、でんぷんがα化されて消化がよくなります。
「高カロリー・低脂肪・低残渣・低刺激」が食事の基本とはいえ、毎日制限のある食事ではストレスが溜まってしまう人も多いのでは。体調がいいときは、今まで控えていた食品や、新しい食品にチャレンジしてみるチャンスでもあります。少しだけ制限を緩めてもいいのではないでしょうか。
「控えていた食品を食べてしまった」「食べ過ぎてしまった」「食べ物の誘惑に負けてしまった」というときも、自分を責めたり落ち込んだりする必要はありません。「次の食事から、新たな気持ちで再度調節しよう」と、前向きに考えましょう。時には自分にごほうびをあげることも大切です。「好きなものを少しだけ食べてみる」というような例外の日を設け、上手にストレスを解消しながら、食事療法を続けていきましょう。
(監修者:管理栄養士 優生)
※個人の体質・病状などにより、記事の内容と異なる場合があります。不安なことがあれば、主治医や栄養士にご相談ください。
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