生薬「青黛」による潰瘍性大腸炎の治療の有効性と安全性【特集:JSIBD2018】

ニュース2018/12/17

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青黛に関する臨床試験と実態調査の結果を慶應義塾大学の長沼誠先生が発表

潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸の粘膜で広範囲に連続した炎症が起こる疾患です。その炎症によって、慢性的な腹痛、下痢、血便、便漏れなどの症状がみられます。2016年の統計によると、日本には16万人以上の患者さんがおり、増加の一途をたどっています。潰瘍性大腸炎は原因不明の難病ですが、生物学的製剤、免疫調節剤、血球成分吸着除去療法などの登場により、治療成績は大きく改善したといわれています。これらは非常に有効な治療法ですが、それでも各治療による寛解率は10~30%程度とされ、強力な治療を行ってもなかなかよくならない患者さんが数多くいます。

このような状況のなかで、慶應義塾大学医学部 消化器内科の長沼誠先生らのグループは、生薬の1つである青黛(せいたい)が潰瘍性大腸炎の治療に有効であることを、プラセボ(偽薬)を用いた多施設共同二重盲検比較試験を行って実証しました。また、青黛の安全性について実態調査を行い、第9回日本炎症性腸疾患学会学術集会で発表しました。

青黛は難治例の潰瘍性大腸炎患者さんに対しても有効である可能性

青黛とは、植物から抽出した粉末状の生薬で、日本でも染料(藍)や健康食品などとして用いられてきました。近年、青黛が一部の難治性潰瘍性大腸炎患者さんの治療に使用され、有効であることが明らかになっていますが、科学的に有効性や安全性を検証した報告がないといった課題がありました。そこで、長沼先生をはじめとするグループは、どのくらいの量の青黛を投与すると科学的に有効であるのかを検討する臨床試験を行いました。

まず、全国の21施設から登録された中等症以上(Mayoスコア6以上)の86名の患者さんを、無作為に4つのグループに分けました。そのうち3つのグループには、青黛を1日あたり0.5g、1.0g、2.0g投与し、残りの1グループには、プラセボ(偽薬)を投与。投与開始から8週間後に、各グループの有効率・寛解率・粘膜治癒率を比較しました。

治療8週における4つのグループごとの患者さんの有効率は、13.6%(プラセボ)、69.6%(0.5g/日)、75.0%(1.0g/日)、81.0%(2.0g/日)という結果になりました。これは、青黛を投与しなかった患者さんと比較して、青黛を0.5g/日以上投与した患者さんで高い有効性を示した、つまり、青黛によって潰瘍性大腸炎の症状が改善したということを示しています。また、寛解率、粘膜治癒率についても、同様の結果になりました。また、重症度の違いや免疫調節薬や副腎皮質ステロイド薬の併用の有無についても、青黛の有効性に影響しませんでした。

これらの結果をより客観的に評価できるよう、バイオマーカー、便潜血の定量検査、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)についても調査しました。いずれも、青黛による治療の前後で、変化することが確認できました。

今回の臨床試験期間中に、軽度の一過性肝障害、頭痛、胃痛・腹痛、嘔気が5%以上の患者さんにみられましたが、重篤な有害事象は認められませんでした。

※有害事象:薬剤などを服用中に起こる好ましくない症状で、薬剤との因果関係が否定できないものすべて(薬剤との因果関係が明確になったものは副作用)。

青黛の使用による有害事象の可能性、その実態調査結果

近年、一部の患者さんが青黛やその成分が含まれる製品を自分で購入し、自分で投与量や期間を判断して使用するという現状があります。しかし、青黛を自己判断で使用した結果、複数の患者さんで肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症が確認されました。それを受けて、2016年12月、厚生労働省は、患者さんが自己判断で青黛を摂取せず、必ず医師に相談するよう指導を求める通知を出しました。その注意喚起を受けて、患者さんの安全性を最優先とし、先の臨床試験を中断。青黛の安全性を検証するため、有害事象の実態調査を行いました。

その結果、肝機能障害45例、腸重積(ちょうじゅせき)11例、肺動脈性肺高血圧症11例が、青黛による有害事象として挙げられました。

肝機能の値が異常値を示す肝機能障害は、内服開始から2か月以内に約半数の人が発症し、投与量は少量(0.5g/日)でも起こりました。

腸管の一部が後方の腸管に引き込まれて腸管が重なり合い、腸閉塞を引き起こす腸重積は、内服開始から比較的短期間で起こり、投与量は少量(0.5g/日)でも起こりました。また、発生しやすい部位は、盲腸から上行結腸に多くみられました。腸重積11例のうち、6例は保存的治療もしくは内視鏡治療で改善しましたが、4例は手術に至りました。

最も重い有害事象である肺動脈性肺高血圧症は、投与期間が比較的長期間の場合に起こり、投与量は少量(0.5g/日)でも起こりました。肺動脈性肺高血圧症が認められた後に青黛の使用を中止した7例は症状が改善し、青黛の使用を継続した4例のうち3例は改善が認められませんでした。これらの結果から、青黛の使用を中止することで、ある程度の改善が認められると思われます。

安全に使用できるような青黛の研究を進め、潰瘍性大腸炎の新しい治療法の開発へ

今回の調査で、潰瘍性大腸炎に対する青黛の有効性が、科学的に確認されました。しかし、有害事象の例があることから、もし潰瘍性大腸炎の治療に青黛を使用する場合は、医師は患者さんに対して事前に副作用をきちんと説明しておく必要があること、また、現時点では青黛を長期間使用することは非常に危険であることを強調されました。長沼先生らは、将来的に青黛を安全な薬として使用できるように、有効成分であるインドール化合物のインジゴ・インジルビンを抽出するなどして副作用の少ない新薬の開発や、潰瘍性大腸炎の病態解明に向けたさらなる研究を推進されるそうです。

(IBDプラス編集部)

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